表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Re:

作者: カムパネルラ

『カナシイは痛いですか?』

無機質な電子音で彼女は言った。

彼女、と言ってもそれはアンドロイドであり、生き物ではない。


『痛くはないよ、死にたくはなるけどね。』

私にとってのカナシイはそういうものだ。


『わたしにはわかりません。カナシイもウレシイも。だからあなたを守れます。』

プログラムされた笑顔で彼女は笑った。


彼女は私の愛した女性と同じ顔で。

だけども彼女はアンドロイドだ、本物が笑う時は八重歯が覗く。

その点は再現されていなかった。


『今日はどうされますか?』

『何もしたくない。』

『かしこまりました。』


そういって彼女は部屋を出て行った。



『誰も私を許してくれない。許してくれる人もいない。このまま、ずっとこのままなのだろうか。』



この場所で彼女と生活し始めてからもう数年が経つ。


過去に私は大罪人だったらしい、遠く記憶も霞、覚えてはいない。

覚えていないことこそが私の犯している罪なのかもしれない。


誰もいない、穏やかな地獄で私はどんな夢を見ればいいのだろう。


彼女は何から私を守っているというのだろう。

大罪人の私に復讐しにくる誰かがいるのだろうか。



もしもいるとしたなら私は早くその復讐者に会いたいと思う。

この地獄を終わらせてくれるなら、私はなんだって受け入れるだろう。



たとえそれが、私と同じような罪を負わせることになっても。


彼はやがてくるだろう。

かつての私と同じように、復讐をしに。


この椅子が空き、また誰かが座る。

決められた地獄をまた繰り返すのだ。


『あなたを守れます。』

最後に聴いた彼女の言葉が優しく脳裏に響いた。

いつぶりかの涙が流れていた。


『カナシイは痛いですか?』

アンドロイドは傍に立ち、また私に問いかけた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ