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親の取り決め
「まあ、では大学を出たらそのまま?」
「はい、私の下で社長になる為のノウハウを学ばせるつもりです」
見合い場での話は弾む。
ただしそれは、お互いの親同士がである。
「素敵ですわ、それではすぐに婚約式を手配しましょう」
「それから、梓さんが卒業したら直ぐに結婚の運びで」
「いいですわね」
そう盛り上がっている中、梓と昴は無言だった。
昴は罪悪感で、梓はただ冷静なだけである。
それでもお互いの両親は構いはしない。
「あの、外に出ませんか?」
そう誘ったのは昴だった。
「…?」
見合いに形式など不要だと思っていた梓は、ただ時が過ぎるのを待っていただけである。
昴の誘いは無駄だが、お互いの親が嬉しそうに賛成するので従う事になった。
「こんな事になってすみません」
昴は苦笑する。
二人で外に出たとはいえ少し離れた所で昴のお付きが見守る、監視している。
「いえ、大丈夫です」
笑顔も無く梓は答えた。
「本当に、弟にも梓さんにも迷惑を…」
「…どういう事ですか?」
何故見合いの運びになったのか、経緯は全く知らない。
ただ、相手に目をつけられたと思っていた。