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報告会
「庵、久しぶり」
「知先輩!」
休日、庵は報告の為に知と待ち合わせていた。
知は庵の転校前の学校の先輩であり、兄昴の友人だった。
「学校どう?楽しい?」
「巴はどうしてた?」
兄の質問に被せ、知は問う。
すると、昴はやれやれという表情をする。
「知、気が早すぎだろ」
「済まない昴」
立ち上がってた知は座る。
学校に瞳の内通者は沢山居るが、知には庵一人だった。
それも無理を言って転校してもらったのだ。
「いつも助かるよ。礼は何がいい?」
知が問うと、庵はいつもいらないと言う。
その代わり昴が欲しいものを言うのだ。
だが、今回は違った。
少しだけ言うか考えるとポツリと呟く。
「…島崎さんが欲しい」
その言葉に二人は驚いた。
顔を見合わせると、知が資料のページをめくる。
「島崎梓、SHIMAZAKIの令嬢か…」
「これなら、昴の方が出来そうだよね」
「そうだな…」
「ちょっと待って!冗談、冗談だから!」
自らの吐いた言葉と彼等の行動に、庵は慌てる。
その場はそれで納まったものの、それは取り返しの無いものとなった。