放課後の勉強会
「じゃあ、行こうか」
「うん」
庵は嬉々とする。
秋というおまけは居るものの、梓と居れるからだ。
三人は駅近くのマクドナルドに着くと、奥の席を選んだ。
「私語は慎んでよ」
梓は言うと、勉強道具ではなく本を出した。
「じゃあ、やろうか」
「うん」
秋と庵は勉強道具を出す。
「苦手なのは英語だけ?」
勉強途中、庵は秋に問う。
すると、秋は首を横に振った。
「実は殆どの教科が苦手。皆に教えて貰ってやっとって感じで…」
確かにと、庵は納得する。
資料でも成績の良い巴や梓に比べて、秋は劣っている。
「そう…」
庵が秋に返す言葉はそれだけだった。
「蓬莱さんと島崎さん、好き?」
「えっ⁉️」
終盤の突然の質問に、秋は動揺した。
「うん、二人ともいい人だよね」
秋は確実に戸惑っていた。
「恋愛的には?」
質問の仕方が悪く、確信を問う。
庵が彼等の学校に来たのは、他に知のライバルになり得る対象が居ないか調べるのも含めているからだ。
「二人とも、無駄話するなら切り上げるよ」
梓の言葉に話は途切れた。
「庵くん、勉強教えてくれてありがとう」
「名前…」
「駄目だった?」
庵のことを名前で呼ぶ人は少ない。
それに、今まで学友で名前を呼ぶ人は居なかった。
「何で…?」
「友達になりたいから。僕の事も秋って呼んでいいよ」
「じゃあ…秋、島崎さん、また明日」
そう言うと、庵は駅に向かったのだった。