93/113
庵と梓
「嫌だなぁ、ただの転校生だよ」
笑顔で庵は言うと、教室を出ようとする。
「何で、巴の後をつけるの?目的が無いとしないよね?」
「駄目なの?」
「駄目に決まってる」
「ふぅん…」
すっと表情が消える。
「まぁいいか、知先輩に頼まれたんだよ。蓬来巴さんの監視」
「とも?」
「高木知、彼の後輩なんだ」
あっさりと梓に告げる。
「何であっさり白状したの?」
「聞きたいんでしょ?それに…」
そこで急に笑顔になる。
「君に興味持っちゃった、島崎梓さん」
「⁉️」
「大会社SHIMAZAKIのご令嬢で、蓬来巴さんの友人」
「何で…」
「何でって、蓬来巴さんの資料に書いてあったから」
そして、突然話題が変わる。
「一応確認するけど、千羽蓮は雇われ彼氏なの?」
「そんなの、本人達に聞いたら?」
「まあいいか、しばらく転校したくないし」
「は?」
「彼氏が嘘なら、必要無いでしょ?それより、早く戻りますしょう。まだご飯食べてないですよね!」
もう、昼休みが終わりに近い。
恐らくそろそろ巴も戻る筈だ。
梓は庵に引っ張られ、教室に戻った。