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友達とリムジンに揺られ
「光、緊張しなくていいからね」
「うん…」
車の中、光が黙っていると巴は言う。
だが、緊張するものはするのだ。
「真田さん、食べ物と飲み物頂いてよろしいですか?」
「お好きなものをどうぞ」
真田は正面を向いたまま言う。
承諾を得ると、巴は光に渡した。
「これは依頼よ、緊張するのはいいけどフリはちゃんとして頂戴」
小声で光に告げる。
「光、深呼吸して。今から緊張したら身が持たないわよ」
巴は笑む。
だが、それは作り笑みだ。
それを見た途端、緊張が解ける。
「巴…」
「これ、飲んで頂戴」
巴に渡され頷く。
〈あなたは後戻りできない〉
巴は心の中で呟いた。
長い時間リムジンに乗っていると、景色が変わっていく。
やがて田舎の方へと入っていった。
住宅エリアも抜け、長い一本道になる。
門も抜け、車は家屋の近くに止まった。
「巴お嬢様、お疲れ様です」
真田はリムジンのドアを開けると言う。
二人が出ると、再び真田はリムジンに乗って屋敷を出た。
「瀬尾さん、行きましょう」
巴は言うと、家の門を開けた。