友達を家へ招きます
「はい、では裏門へお願いします」
放課後、巴は携帯で言う。
その日は土曜日。
瞳お抱え運転手と連絡を取り、人の少ない裏門へとお願いしたのだった。
「瀬尾さん、ちょっと鞄持っててくれる?」
「いいけど…」
訳がわからず、そう返事する。
すると、バレッタで髪を留めた。
「ありがとう」
巴は鞄を受け取ると、静かになる。
二人は裏門近くに身を潜めていた。
少ないとはいえ、全く人が通らない訳ではないのだ。
近くには駐輪場もあるし、近道で通ろうとする輩も少なくはない。
実際、おそらく帰宅部であろう生徒がちらほら通っていた。
黒いリムジンが現れる。
偶然裏門を通った生徒は驚きながら去る。
その生徒が去ると、人は居なくなった。
「行きましょう」
そう言った巴は別人だった。
雰囲気さえも、違う。
出来るだけ人と目を合わさない様にしていたが、今の彼女は正面を向いている。
「真田さん、お久しぶりです」
車の外に立っていた男性に言うと、直ぐに乗る。
真田徳馬は瞳のお気に入りでもある。
「お久しぶりです、巴お嬢様」
「私はお嬢様ではないですよ」
巴は苦笑いした。
車の中での様子は、学校での巴とはやはり違った。
「彼女が私の友人です」
巴は微笑む。
もうここから嘘の友人は始まっていた。