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ままならない
「お久しぶりです、お義父さん」
瞳と知がレストランに着いてわりと直ぐに孝明はやって来た。
「ああ、知君。久しぶりだね」
孝明は優しい目をする。
それは孝明がそういう人物だからだ。
店員が椅子を引き、孝明は礼を言って座る。
料理は瞳が先に頼んでおいたので、直ぐに来るだろう。
「巴さんはお元気ですか?」
「ああ、元気だよ。最近は友達もできてね、時々楽しそうな顔をするんだ」
孝明は嬉しそうに語る。
だが、それは瞳にとっては良くない事だった。
「知、先程の話の続きをしましょう」
瞳は話題を変える為、そう切り出す。
「そうですね。母さん、何故勝手に転居先を変えたのですか?」
本来は一人暮らしをする筈だった。
義父である孝明と相談して新居も決めていた。
「あなたは私の息子よ。一緒に住むのは当然でしょう?」
「それでは、一生一緒に住むつもりですか?」
「できるならそうしたいわ」
それが母の本音だった。
「どうやって知ったのですか?」
「そんなもの、いくらでも方法はあるわ」
ニコリと瞳は笑う。
それは抵抗しても無駄だと言っている様だった。