知の帰還
「ただいま戻りました」
高木コーポレーション社長室、高木知は空港から直行で会社に来ていた。
「お帰りなさい、知」
時間は予定時間ピッタリである。
「正式移動は明日からよ。それから、勿論荷物は私のマンションに来るよう手配したわ」
「なっ!」
本来自分が手配した場所は母の所ではない。
それがいつの間にか変えられていた。
「それは、会社を出てから話しませんか?」
冷静になった様に知は言う。
「私とした事が。そうね、そうしましょう」
そう言うと、内線で退社の旨を伝える。
「今日はあなたはお休み、今から食事に行きましょう」
「はい」
こうして、瞳と知は会社から出た。
「知、こうしてゆったりできるのは一年ぶりね。嬉しいわ」
「俺もです。そうだ、お義父さんと巴さんを呼びませんか?」
「そうね、孝明さんを呼びましょう」
瞳は知に笑顔で言う。
ただ、瞳は夫の名しか言わなかった。
直ぐに運転手の真田は連絡を取る。
行き先を告げると電話を切った。
「何故巴さんは呼ばないのですか?」
母と巴が仲良くないのは知っている。
だが、仮にも婚約者なのだ。
会うのはおかしな事では無い。
「彼女は学校よ。それに、家族では無いわ」
瞳は冷たく言い放つとそれでやめた。
それから少しして行き付けのレストランへ着いた。