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相談
「成る程ね、婚約か…」
また大層な問題を持ってきたものだと、梓はタメ息をつく。
「ええ、だからこちらはそれを破棄するために文句の付け所の無い相手を用意するしかない。それもこちらの事情を飲み込んでフリをしてくれる相手を」
「難しいね」
生徒会に入り人気が上がった今、普通に付き合うだけなら誰でもいいだろう。
だが、フリを了承する相手となると話が変わる。
「ご両親が圧力に負けない相手、此方を好きにならない相手、誰か思い付く?」
「うーん、そういうのに疎いからね…光なら知ってるかもしれないけど」
「光には相談できない」
「そうだね」
彼氏、それが嘘でもきっと嫉妬する。
下手に彼女にだけは話せなかった。
「今日、泊まりで大丈夫だったの?」
「えぇ、父に許可取ったわ」
本日は梓と二人きり、それだけでも光は嫉妬しそうだ。
「まぁ期限はたっぷりあるんだし、焦らなくてもいいんじゃない?」
「そうね」
梓といると波長が合う。
焦っていた心も、梓のお陰で落ち着く。
そして、ゆったりと契約者を見つけようと巴は考えたのだった。