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友達と買い物を

「巴!」

巴は馴れ馴れしい、と思いながら振り向く。

朝まで蓬莱さんだった呼び名は、いつの間にか巴、と下の名だ。

「皆、じゃあね!」

光が手を振ると皆暗い顔や苦い顔で手を振り返すが、光はあまり気にしない。

二人が出ると、クラスメート達は溜め息を吐いた。

「言うタイミングが無くて言いそびれたけど土曜日の放課後、義母さんに会ってもらうから」

「土曜日って、明後日!?」

「そう、明後日」

驚く光に、巴の態度は淡々としていた。

「で、どこ行くの?」

「う~ん、やっぱり服かなぁ。あと、スイーツ食べながら歩くのが定番だよね!」

「そうなの?」

「時間取れるなら映画とか、親が許すなら夜ご飯を食べて帰るのもありだけど?」

だが巴の家は遠く、電車で二時間かかる。

「巴の家って、どこ?」

「倉原より先にある中目崎って場所だけど…」

「そっち方面か。しかも遠いね…」

光は困り果てる。

「うちに泊まる?」

光が言うと、巴は首を横に振る。

できるだけ仲良くなりたくないのだから当たり前だ。

「よし、アクトモール行こう!」

考えた末、光はそう決めた。

アクトモールとは、学校のある駅から倉原方面に三駅行った場所にあるショッピングモールだ。

電車で三駅、それから10分程歩く。

「ここ、映画は無いけど結構色んなショップ入ってるんだ。好きなショップある?」

パンフを持ってくると、光は巴に見せる。

「特には…」

「どんな服が好き?」

「別に…」

光は巴の回答に困る。

巴自身も、本当にわからないのだ。

買い物自体をしない。

外出する時が滅多に無い上、必要な時は瞳の使用人が持ってくる。

パジャマですら、瞳の使用人や父が選んだものだ。

「じゃあ、適当な店に行こうか」

光はそう言うと、歩き出した。

「クレイジーキャッツ!ちょっとロックテイスト入ってるんだけど、行っていい?」

光が問うと、巴は頷く。

光はルンルン気分で入っていく。

真っ先にスカートを見る。

超ミニのプリーツが好きなのだ。

「あっ、これ!」

黒とオレンジの二着に目をつける。

試着室にサッと入る。

「ねぇ、どう?」

光は黒を着てポーズをとって問う。

とはいっても上は制服だ。

正直わかりづらい。

光は近くにあった上のセットアップを当てる。

「こんな感じ」

光は楽しそうだ。

だが、ロックテイストは好きになれそうにない。

「こっち系好きじゃない?」

光の問いに、巴は頷いた。

「もう一着も着てみるからちょっと待ってて」

光はサッと着替えるとオレンジの方を穿いて出た。

同じくセットアップを上に当てる。

「うん、こっち!」

光は即決すると再び着替えて出た。

結局、オレンジを買う。

「雑貨行こう!」

それ以降、光は服を断念すると雑貨を中心に回る。

「見てみて!」

ファンシー雑貨の店で、可愛らしいキャラクターのシャープペンシルを巴に見せる。

巴は一瞬笑顔になり、光はそれを見逃さなかった。

その店を一通り回る。

「これ、あげる!」

光は縦長の袋を渡す。

中身は勿論シャープペンシルだ。

「私のはキャラクター違い、お揃いね!」

光は楽しそうだった。

ショッピングモールの中は時間がわかりにくい。

二人は時計を見た。

「時間、ヤバい?」

「うん」

「じゃあ、クレープ食べて帰ろっか!」

光は言うと、巴の手を引いた。

一階にあるクレープショップ、そこには数人の学生やカップルが並んでいる。

「ちょっと待たないとだね」

光の言葉に巴は頷く。

「ペン、ありがとう…」

巴は言う。

人にタダで貰ったのは初めてだった。

「いいんだって!友達でしょ?」

「……」

その言葉には無言で下を向く。

友達ではなく、友達のフリだからだ。

「あ~、フリでも友達!」

光が言うと、巴は驚いて顔を上げる。

「巴、いつもそんな風に笑顔になればいいのに」

無意識の微笑みを見て、光は言ったのだった。

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