62/113
密かな恋人
「杏先輩?」
それは生徒会に入ってしばらく経ったある日の事だった。
廊下を一人歩いていた巴は、同じく生徒会の斉賀杏を目撃した。
彼女は巴に気付かず去っていく。
何となく気になった巴は、彼女を追った。
そこは人気の無い場所、杏はキョロキョロ辺りを見回すと安堵した。
「?」
待ち合わせらしく、彼女はそこで待つ。
「杏」
巴が居る場所とは反対方向から、男子生徒がやってくる。
キラキラのイケメン、だが巴はそんな生徒を知らない。
彼は後ろから杏を抱きしめる。
そして、キスをすると座った。
そう、それは逢引きだった。
そんな二人を観察するのは野暮だ。
巴は校舎内に戻り、本来の目的地へ向かうことにした。
とはいっても気になるものはなる。
特に男子生徒、あんな生徒居ただろうか?
最初は三年、二年、一年、そして教師、全部見たがわからなかった。
「蓬莱さん、もう来てたの?」
操が現れ、後ろから杏も現れる。
「あ、はい」
写真付き名簿を直すと、巴は椅子に座った。