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幼馴染のお兄ちゃん
生徒会に入ってしばらく経ったある日の事だった。
体育館へ通じる道を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。
「蓬莱さん」
男子の声。だが、知りあいにそんな声の人物は居ない。
しかし、呼ばれているのも事実だ。
誰だかわからない、でも呼ばれている。
「はい」
巴は振り返った。
人通りは無く、この場所には巴と声の主しか居ない。
声の主は、すぐ側に来ていた。
笑顔の男性、生徒ではなく若い教師。
だが、確実に見覚えはある。
「悠、お兄ちゃん?」
「巴ちゃん、久しぶりだね」
随分昔の記憶だというのに、その笑顔は変わらない。
悠は昔と同じ様に優しく、巴の頭を撫でたのだった。
その時、ガヤガヤと喋り声がした。
「悠お兄ちゃん、恥ずかしいからやめて」
「あぁ、ごめん。つい昔を思い出して」
悠はニコリと笑ったのだった。