予定変更、友達になる目論み
御手洗いから出ると、お手伝いさんはまだ居た。
「まだいらしたんですか?」
「えぇ、待っていたんです。奥様がお待ちです、こちらへどうぞ」
なにも知らない苺は疑問に思いながらもついて行く。
「あの…?」
「この部屋です。お入り下さい」
そう言うと、お手伝いさんは去っていった。
苺はどうすればいいかわからず、言われた通り入る。
中には、玄関で見た女性が居た。
「はじめまして、名前を教えて下さる?」
玄関時とは違い、笑顔で女性は言う。
「松宮苺です」
苺は答えながら顔を見た。
何だか見おぼえのある気がするのだ。
「ごめんなさいね、こちらが聞いておきながら答えてなかったわね。私は高木瞳、高木ホールディングスの社長をしているわ」
高木ホールディングス、それは誰でも知っている大会社だ。
「この部屋へ呼んだのはお願いとお礼の為、これからあの子と仲良くしてやって頂戴」
「…仲良く?」
頭が混乱する。
「勿論お礼はするわ」
瞳は言うと、封筒を出す。
「どういう事ですか?」
苺は一般人だ。両親はサラリーマンと主婦、普通の一軒家の一般家庭。
家柄で娘の友達を選ぶなら、確実に離される方だ。
「そのままよ。お金で、利害で友達になって欲しいの。あなたはまだ友達ではないから理想なのよ。もし報告もしてくれるなら、更に弾むわ」
その笑顔に心はこもっていなかった。
「…ありがとうございます。友達になるつもりは無かったけど、私はあなたの願い通り友達になります」
元々、自分で本当の友達と思える人は居ない苺にとって簡単だ。
それに、巴と一緒の方が光や蓮と居やすくなる。
そう、瞳と苺は同類だった。