苺は友達ではない
巴は部屋に入る頃には眼鏡をかけていた。
「光、ライトノベルの作品面白かったわ」
巴は言うと、借りていた本を返す。
光はそれを受け取ると鞄に直す。
「本当は漫画の方が読みやすくて楽なんだけどね」
光は苦笑いする。
「瀬尾さん、それそんなに面白いんですか?」
「え?あぁ、面白いよ。好きだから小説も漫画も持ってるの」
「じゃあ、漫画版貸してもらっていいですか」
「いいよ」
光はチラッと巴を見るが、巴は気にしない。
その間に巴の隣には梓が座っていた。
なぜだか梓といる時の方が、巴が自然な気がする。
光はいらっとした。
「あ…蓬来さん、お手洗い借りたいんだけど」
苺は急に催し始める。
お手伝いさんが出した飲み物を飲んですぐだ。
「どうぞ」
巴はそう、一言だけだ。
だが、それだけでは場所がわからない。
「どこに…」
「誰か居るから聞いて頂戴」
目線を合わせず、冷めている。
「あ、わかった…」
それ以上は無理だと悟り、苺は誰か居る事を祈って部屋を出た。
そして彼女の言う通り、お手伝いさんが居た。
トイレの場所を聞くと、親切に教えてくれる。
「お嬢さんは巴さんとお友達でしょうか?」
お手伝いさんは問い、苺はそれを否定した。