秘密の友達
「蓬莱さん、おはよう!」
秋は巴を見つけて挨拶する。
今は登校中、周りには沢山の生徒がいた。
「おはよう…」
巴は恥ずかしさで顔を赤くしながら小さな声で挨拶する。
秋は隣に来るともう一度おはようと言った。
巴とは対照的に秋は明るい。
「桃園君、人がいるから早く行って!」
下を向いたまま巴は告げる。
確かに二人は友達になった。
だが、それは人が居ない時限定だった。
「う、うん。後でね!」
秋は慌てて言うと、去っていった。
「秋、良かったな」
下駄箱、先に来ていた蓮は言う。
だが、秋は何の事を言ってるかわからなかった。
「何が?」
「彼女と仲良くなれたんだろう?」
「ち、違うよ!ただ挨拶しただけだよ!」
秋は慌てた。
友達になったのは蓮にも誰にも言ってはいけない事だったから。
「蓮、部活は?」
「朝練は終わったよ」
「そ、そっか…じゃあ蓮、早く行こう!」
秋は言うと、慌てて上履きに履き替えた。
秋が階段を蓮と駆け上るのと入れ替りに巴が下駄箱にやって来る。
「大丈夫かしら…」
それは巴の一人言。
だが、それを梓は聞いていた。
「確かに、ちょっと不安だね」
「梓さん」
聞いていたのが梓で安心する。
「まぁ、何とかなるよ」
梓は巴の肩をポンと叩くと去っていった。
巴も、上履きを履いて階段を上り始めるのだった。