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友達になりたい
「蓬莱さん」
次の日の放課後、秋は意を決して声をかける。
別に蓮に言われたからじゃない。
ただ、彼女と話をしてみたかった。
「何?」
振り返った巴は目を見開く。
きっと昨日の事を思い出したのだろう。
「あなた、誰?」
接点の無い二人だ。
その質問は当然だった。
「僕は桃園秋、蓮の友達だよ」
蓮、そう言われても巴にはピンとこない。
「千羽蓮。蓬莱さんのクラスメイト、蓮の友達だけど…」
フルネームで言われ、巴は理解した。
千羽蓮、彼は光の友人だ。
まさか、光が言ったのか?
だからこそ余計に警戒する。
逃げようか、だが今日逃げる事が出来ても明日また来るだろう。
「で、何の用ですか?」
業と睨んで敬語で問う。
秋が何のため来たのか、知ってるのか知らないのか。
脅す為か違うのか。
一瞬秋は怯む。
だが、決意を固めた秋は躊躇う事は無かった。
「僕と友達になってよ」
秋はそう言ったのだった。