友達三人の夜
「光がごめんね」
梓は言う。
その言葉に巴は首を横に振った。
「もう慣れました」
光は自分や梓と居る事で友達だと、友達がどういうものなのかを気付かせようとしていた。
光はクラスの友達とも仲が良い。
でも、最近は巴を優先しているふしもある。
「梓さん…」
巴はそんな光を心配していた。
「なになに?何話してたの?」
風呂上がり、光が問うと二人はさっと話をやめる。
「隠し事?妬けちゃうなぁ」
光は巴に抱きつく。
「次は私ね」
巴は直ぐに立ち上がると梓のパジャマを持って部屋を出た。
「梓、本当に何話してたの?」
光の目は冷たい。
「それは言えない」
梓はそれだけしか言えなかった。
巴が出ると梓の番だった。
梓は巴に貸したものの色ちがいを持って部屋を出る。
巴は梓の持つ小説を一つ拝借する。
「僕は死んでいる」
そんなタイトルの本だった。
生きながらに死んでいる、そんな男子学生の物語だ。
壁にもたれ掛かり、本を開く。
それは話しかけるなという証でもあった。
梓の風呂は長かった。
ドライヤーが洗面所にあるせいもあったが、髪が完全に乾いてから梓は現れる。
「二人共、寝るよ」
梓は戻ると早々に言う。
巴は顔を上げると本を直して布団に入った。
そして光に有無を言わさず二人は寝たのだった。