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巴の友達に求めるもの
「瀬尾光さん」
貼り付いた笑顔で声をかけてくる。
高木瞳は光を私室に呼んだ。
「はい、これ。これからも巴さんの友達で居てちょうだいね」
まるでご褒美の様に、茶封筒を光に差し出す。
中身は金だ。
「本当に、そんな事するんだ…」
光はボソッと呟く。
まさか本当にそんな事する人がいるとは思わなかったのだ。
「瀬尾さん?あなたまさか…」
大抵の人は受け取る。
だが、例外もある。
過去に一度だけあったのだ。
受け取らない事例が。
巴は光に金を受け取れと言った。
だが、それでは本当に金目当てになってしまう。
しかし受け取らなければ家族ごと潰される。
数秒考え、決断する。
「断る!私は巴の友達よ。あなたの家来ではない!」
光は言い放った。
「そう…ならお帰り頂くわ」
瞳が言うと、ドアが開く。
そこには屈強な男が二人居た。
「覚悟する事ね、私の手を振り払った事を」
その瞳は心の底から冷たい事を示していた。
光は巴に挨拶をする間もなく追い出される。
「お嬢様、お友達が帰られました」
家政婦から巴に伝えられる。
巴は溜め息をつく。
「光は馬鹿ね…」
巴は思いを馳せた。