脅し
「そろそろ別れましょう」
巴は言った。
「卒業まで別れないと思ってたんだけど」
「そうね。でも勉強もあるし、別れても不思議じゃない。ここから距離を置きましょう」
だが、巴の言葉は通用しなかった。
「嫌だけど」
あろうことか、蓮はそう良い放ったのだ。
「は?これはフリよ。忘れたの?」
「でも、君と別れるつもり無いんだけど」
「私の事、好きな訳は無いわよね」
「恋愛ではね」
「お金?地位?」
「いや、違うよ」
「じゃあ何?」
「君の事、気に入ってる。手に入れたい」
巴には意味がわからなかった。
それに、巴は蓮の事好きではない。
ただ利用しただけ。
「とにかく、私は言ったわ。別れると」
それでお終いと、巴は翻した。
だが、蓮は引かない。
「君、秋が好きでしょ。母親が知ったらどうなるかな?」
「は?そんな訳無いじゃない。私は誰も好きじゃない」
「たとえ嘘でも、大変な事になると思うけど」
「彼は友人よ。そんなつもりは無いわ」
「ふーん。じゃあ、言ってもいいんだね」
そう言うと、蓮はスマホを取り出す。
「…待って、契約は変わらない。卒業までよ」
結局巴は折れた。
もし秋に手を出したら、一般家庭の秋の家はひとたまりも無い。
無事ではいられない。
「じゃあ、放課後いつも通りに」
「…わかったわ」
蓮は去っていった。