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席を立つ間に
「ごめん、私お手洗い行ってくる」
栞が急に立ち上がる。
そして、彼女は個室から出ていった。
「昴さん、私を弟の友人として紹介したんですね」
初めて二人きりになり、梓は突然言った。
「ごめん。親の取り決めだし破棄するから問題無いかなって、弟の結婚相手になってくれたら嬉しいし」
「すみませんが、弟さんの結婚相手なるつもりもありません。そもそも、そちらが送り込んで来たんですよね?巴を監視するために」
「あれ、知ってるの?」
「高木知の依頼、よくそんな依頼引き受けましたね?」
「あー、そこまで…ごめんね?でも、監視じゃなくて見守る為だよ。知、友人に頼まれたんだから断れないよね」
「それで弟を巻き込んだんですか?」
「ちゃんと報酬はもらってるよ。庵が君に興味持ったのは意外だったけど」
「そこは断って下さい。レベルの高い学校から少し下げてまでする必要は無い筈です」
「でも、庵が良いって…」
「兄であるあなたの為です」
完全に梓は昴を攻めていた。
「頭冷やして来ます」
そうして梓は立ち上がった。
といっても外に出る訳にはいかず、お手洗いに向かった。




