友達のいない高校生活
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
バレッタで長い髪を留めた少女は、深々と頭を下げた家政婦に見送られ家を出る。
新しい制服に身を包み、学校への道筋を辿る。
「ここまで来れば大丈夫でしょうか…」
人通りの少ない道に入ると彼女は呟く。
すると、徐にバレッタを外した。
更に眼鏡をかけ、髪をぐしゃぐしゃにすると再び歩き出した。
高校は遠い私立を選んだ。
通うのは大変だが、知り合いは居ない。
彼女の名は蓬莱巴、多分普通の女子高生だ。
知り合いの居ない高校で友達を作らず普通に授業を受け、部活はせずに帰る。
「うん、あれは確かに良かったよね!」
「マリアが愛で人形から人間になるって、素敵だよね」
「それ知ってる!アメリカの映画の日本版でしょ?日本版は見てないけど確かに良いよね!」
帰ろうとすると話し声が聞こえる。
クラスの人気者、瀬尾光と女生徒達だ。
少しギャルっぽいけど人当たりが良い。
常に彼女の周りは人で溢れている。
「蓬莱さん、帰るの?じゃあね~!」
どんな人間にも人当たりが良く、巴が黙って帰ろうとすると手を振った。
巴は教室を出る。
「蓬莱さんって何か苦手~」
「わかる~!何考えてるかわかんないよね」
「クラスメートじゃん!駄目だよ、そんな事言っちゃ!」
「でもさ、瀬尾さんだってさっきも無視されたじゃん」
「そうだよ!そんな人の肩持つ事無いよ!」
「う~ん」
光は頭を掻く。
実は、光は気づいていた。
サヨナラ、声はしなかったが口がそう動いていた事に。