2-3ザリガニ狩人
喇蛄狩人
乞食喇蛄(ジュッキャク目ザリガニ科)
体長 百センチ程度
営巣場所 池・沼地の浅く流れの緩い淡水部
食性 動物食性
蟹狩人は、狩りの主体とする獲物で狩人としての技量や力量の判
別ができる。沼地や池に生息する乞食喇蛄を獲
物とする喇蛄狩人は基本的に新米である。
体長はハサミ状の腕部を含めての計測である。ハサミの大きさが
平均として三十センチ程度はある。このハサミを武器として、獲物
を捕獲する。ハサミの切れ味はよくなく、どちらかというと挟んで
握りつぶして切るような感じだ。
そのため、腕や足を挟まれた場合は早い段階で対処しないと、中
途半端な切れ方で傷口を潰したような状態となり、治癒までの時間
が長くなるので注意をしたい。
このザリガニは動物食性である。かなり貪欲で多少腐敗している
肉でも平気で餌としている。人においても、不用意に沼地に入ると、
腹を空かした多数のザリガニに襲われ、餌食となってしまうことも
ある。
繁殖性も高いため、定期的に駆除の依頼が発生する。しかし、一
定数以上になると餌の不足から共食いを始めるため極端に生息数が
増えるということはない。
それでも旅人や、周辺住人が森等で薬草等を採取する際に、誤っ
て襲われないように狩人組合が定期的な駆除を執り行っている。
「池や沼の中に入らなくとも、浅瀬付近まで近寄ってきます。場合
によっては水辺近くの陸に上がることもあります。油断をしている
と背後から足を掴まれ、そのまま水の中にまで連れていかれてしま
います。一般人からすると厄介な生き物と言えます」
(狩人組合担当者談)
このザリガニは群れで生活することはない。繁殖期に交尾を行う
際や、孵化直後の子育て期間以外は単独生活である。
しかし、一つの場所に複数存在することが常であるため、少数の
捕食対象に対して、複数の個体が群がることが多い。始め、一匹と
対峙していても何時の間にか複数の個体が近寄り結果として群れを
対処することが多くなる。
「乞食ザリガニは弱いがなにしろ相手をすると長丁場の戦いになり
がちだ。素材自体もそれほど高値ではないから、ある程度の狩人や
冒険者なんかは相手をしなくなる。例え襲われても、さっさと一匹
目を叩き潰して、放っておく。叩き潰したザリガニを餌に、後の奴
らはこっちを追わなくなるからな」(冒険者談)
「弱いと言っても、新米の頃はそれなりに脅威です。一匹なら確か
に新米同士で班を組めば対処できます。ただ、新米の頃は安くても
多く素材を集め資金を手にしたいものです。
だから、寄って来たザリガニに素材を盗られるわけにもいかない
ので、ひたすら戦い続けます。まあ、ある程度で区切りを付けない
と、全員の体力が切れて逆に餌食にされてしまうことになりますが」
(中堅蟹狩人談)
乞食ザリガニと呼ばれる由来としては「取ろうとした獲物をかす
め取ろうとするから」と言う説がある一方、もう一つの由来として
「食に困ると、獲ってよく食うから」と言う説もある。
「泥沼でとれた奴は泥臭くてとても食えたもんじゃないが、ある程
度水の澄んだ池なんかで獲れるやつはまあ、食えないわけでもない。
この辺の新米狩人は、乞食喇蛄か皇帝蝗なんかを取って食費を少し
でも浮かすのが基本かな」(中堅狩人談)
「一昨日は蝗、昨日はザリガニ。最近はこの繰り返しです。食費を
少しでも浮かして良い装備を購入したいので仕方ありませんが、た
まには脂の乗った肉が食いたいです」(新米狩人談)
このザリガニの狩りは単純で、基本何もしなくとも腹を空かして
いれば人を襲うので待機していれば良いのだが、時間がもったいな
いので、蝗肉の余りや、腐肉を適当な塊で水辺付近に投げ込めば勝
手に近寄ってくる。そこを武具で攻撃すれば簡単に獲れる。
「おすすめは、斧や槌ですかね。槍や剣なんかだと甲羅の節を狙わ
ないと攻撃が通らないことがあります。重量のある斧や槌なら、甲
羅ごと潰せますからね。こいつの甲羅は弱いから素材としては取扱
いがないんですよ」(新米狩人談)
「おびき寄せの餌で特に好いのは烏賊の腐肉。烏賊狩人の先輩に分
けてもらうんです。……食べれる烏賊は滅多に貰えませんけど。ど
うも烏賊の匂いが好みらしくて、多い場所ならわらわらと集ってき
ます。気を付けないと、対処が難しくなりますけど」(新米狩人談)
誤って、携帯保存食であった干し烏賊の食べかけを池に落とした
際、たまたまザリガニの群生地だったのか大量のザリガニが集まり
始め、対処に苦労したことがある狩人や冒険者もたまに要るとのこ
とだ。
ちなみに、乞食ザリガニの取引部位は、甲羅の中にある白身の肉
とハサミの部分である。
甲羅は先述のように、それほどの強度が無い為、防具や武具の素
材として扱われることはない。
肉の部分は安いながらも買取があり、露店の串焼き等で売りさば
かれる。(乾燥させて専用の寄せ餌とすることもある)
ハサミについては、甲羅に比べれば厚みがあるため弱いながらも
武具や一部の道具に取り扱われる。新米の頃は、ザリガニ装備で、
乞食ザリガニと対峙して退治する日々が続くのだ。