3-4 鎧大葉子
鎧大葉子
オオバコ科オオバコ属
最大高 一メートル前後
生育環境 荒地・獣道
花が咲く時期 暖かい時期
荒地、獣道といった植物が生息するには『過酷』ともいえる場所
で見受けられる鎧大葉子は、その名に由来するように良き防具の素
材となる。
「一般的な甲虫製や、高価ながらも鋼製の防具が好まれる中で、鎧
大葉子製の防具は根強い人気がある。他の植物製防具に比べるとや
や高価だが、一般的な防具に比べれば安価だろう」
(防具店主談)
鎧大葉子を見つけ出すのは比較的簡単だと言える。陽の当りが悪
い広めの獣道を見つければ、他の植物が踏み荒らされた中で唯一、
道に沿って穂先が地面に垂れる様に生息している。踏みつぶされて
もなお、千切れて枯れることはない。
しかし、採取するのに夢中になり道に沿って進むことは止めた方
が良い。その先には必ず大型の生き物が待ち受けていることになる。
「ワシらのような体格の人種や、中型程度の獣が歩いてできた道に
生える大葉子はまあ、小さい草じゃ。鎧大葉子のように大きくなる
には、もっと大きな生き物が歩く必要があるみたいじゃの」
(老植物狩人談)
よって、中堅以上の狩人や冒険者達が鎧大葉子が連なる道を見つ
けた際には進むか退くかを相談してから進むそうだ。
その先に自分達が求める獲物がいる可能性もあり、危険も待ち受
けていることを知らせてくれる草でもあるため「事前草」とも呼ば
れている。
この草は見つけることは容易いが、先述したように大型の生き物
と遭遇する危険性があると共に、踏まれ続けても踏み荒らされない
だけの強靭さを兼ね備えているため採取にはコツがいる。
「一株当たりの取引価格は安いけど、結構そこらに生えているから
採って生活費の足しにしようとしたことがあってね。けどね、結局
刈り採れなかったよ。茎が固くて用意した鎌じゃあ切れやしないね。
まごまごしていたら、大角甲虫が向こうからやって来た。手にした
鎌を放り出して、這う這うの体で逃げだしたよ」
(若き冒険者談)
「まあ、あの草の茎は並の刃物じゃあ切れんじゃろうな。よって、
周りの土をほじくり返して根っこごと持っていくしかないのじゃよ。
植物狩人なら誰でも知っている方法さね」
(老植物狩人談)
採取の際に根こそぎ持っていくことはご法度だということだ。植
物狩人の中では暗黙の了解になっている。全ての株を持っていかず
に、ある程度残せば成長の早い鎧大葉子は定期的に採取が可能にな
るからだ。
そして、採取に当たっては焦らず手際よく、欲張らないことが大
事だと言える。手際が悪い、欲張って量を取ろうとすれば定期的に
徘徊する大型の生き物と鉢合わせをして、若き冒険者のような場面
に遭遇することになる。
運よく逃げおおせれば良いが、自然の中で生きる生き物の歩く速
度は街に住む人種よりも大概早い。遭遇すれば命を落とす危険性は
高い。
採取された鎧大葉子は専門の防具加工職人の元に売られる。使用
される部位は、成人男子の小指ほどの太さになる茎である。
加工に当たり葉や、茎より太い穂先はまず取り払われる。葉は良
く砥がれた短剣でそぎ落とされ、穂先は専用のギロチンのような工
具で押し切り、長さが揃えられていく。
「刃は熱しておく必要があるな。頑丈な草だが、所詮は植物だ。火
には弱い。燃やしたら防具素材としての価値は無くなるが焼き切る
分には問題はない」(防具職人談)
葉や穂先が落された茎は、ひと月ほど乾燥され元の太さより半分
ほどになる。乾燥することに寄り、余計な水分は抜け柔軟になり加
工がしやすくなる。
それでも尚、堅さが残る茎をより合わせ、服の形状に編み込んで
いく。胴体、腕部と別々に編まれた物を更に一つに編むことで服状
の植物製鎧が出来上がる。
「編みこむ作業は生半可な力じゃあできないな。逆に、袖口をより
合わせる作業は手先の器用なカカアの仕事だ」
(防具職人談)
こうして出来上がった鎧大葉子製の防具は、一度水に着けること
で乾燥し縮んだ茎が水分を吸収し、より強靭になる。又、網目も膨
張し、しっかりと纏まる。
「軽くて丈夫じゃから、服下防具として愛用をしておるよ。暑い時
期は水に浸けてから着込めばひんやりとすんじゃ。職人からは、定
期的に水に付ければ持ちも良いと言われておる。ただ、寒い時期は
ついつい、そのまま着込んじまうのう」
(老植物狩人談)
「まあ、乾燥してもそれ程持ちが悪くなるわけではない。ただ、乾
燥しすぎると、たまに火の粉が引火して燃えることがある。その辺
は自業自得だな」
(防具職人談)
鎧大葉子は防具としての素材に目が向きがちだ。しかし、寒くな
る前に採取された穂先についた実は解毒薬として、薬草士が買い取
ってくれる。
「この実をね、乾燥させて煎じれば腹毒の薬になるのさ。時期にな
ったらまとめて買い上げて、作っておくのさ。防具屋からすれば要
らない部分だから捨て値みたいに買い取れるのさ」
(下町の薬草女談)




