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第5話・父と原田とお宝本

 今回は三本立てです。

 よう、俺は統夜の父親だ。せっかくの日曜だし、久々に息子と戯れるか。

 そう思い俺はリビングの引き戸を男らしく開けた。

 きっと統夜が「朝っぱらからうるさいよ!」というツッコミというをしてくれるはず。あいつのツッコミを聞かねぇと一日が始まらねぇからな。


 ………八十年代のマンガだったら背景にトンボが飛んでるぜ。


 んなことよりいつまで経ってもツッコミがこねぇじゃねぇか。まさか反抗期か!?

 く、あまりにも楽しそうに俺達がボケるから、ツッコミなんざやってられっか自棄を起こしやがったな…。

 チクショウ、確かにボケは楽しいけどよ。じゃあ俺の朝はどうなるんだよ!

 仕方ねぇ。ここは母さんにでも緩くツッコんでもらうか。

 けど母さんのツッコミは緩すぎて、イマイチボケだかツッコミだか分からねぇからな。

 たまにこっちが萎縮すんだよな。

 さあ、母さんなりにツッコんでこい!


 ………今度はカラスが飛んでるかな。もちろん八十年代のマンガなら。


 つか静かだなぁ。思わず縁側でお茶啜りたくなるぐれえ静かだ。

 なるほど、つまり…。


 家に誰もいねぇって訳だな!


 チクショウ!

 一家の大黒柱置いてどっか行ってんじゃねぇよ!


 と、家族の冷たさを嘆いていると、がちゃっとドアが開く音がした。

 「ただいま~」

 この声は母さんか。誰でもいい、ツッコんでもらって俺は朝を迎えるんだ!

 「おかえり! 早くツッコんで俺に朝を迎えさせてくれ!」

 母さんが買い物袋を下ろし、「何言ってんのこの人?」みたいな顔して俺を見る。

 「どうして一瞬この人と一緒になったんだろうと考えてしまったけれど…」

 中々キツいこと言うな。だがツッコミをもらうまで俺は引くわけにはいかねぇ!

 「もう昼ですよ」


 ………え?




 なんということだ。ああ、失敬。僕は原田。誇り高きオタクだ。

 何がなんということだなのかと言うと、見たいアニメの時間帯が被ってしまったのだ。二つならまだ良かったんだが、なんと三つも被った。

 全く時間帯をずらしてくれればいいものを…。下らない深夜バラエティー番組を放送するくらいなら深夜アニメにしろ!

 まあ、あまり多く放送されると捌ききれなくなるんだが。

 それに僕ほどのオタクになると、放映中のアニメを全てチェックして神かクソか決める。数が多いと体力的にもたなくなるのだ。あとギャルゲーする時間も減るし。

 それより今の問題は三つも重なりやがったアニメだ。

 前情報でクソ臭がする方を切るというのもあるが、それは僕のポリシーに反する。

 あとでインターネットを見るというのも、犯罪行為なのでやはり僕のポリシーに反する。見逃したらDVD買え! そして業界に金をばら蒔け!

 おっと僕としたことが無駄に熱くなってしまった。

 こうなっては仕方ない。文明の利器を利用し、さらに人脈を活用しよう。

 秘技! 友達に頼んで録画してもらう!

 という訳で早速電話だ。

 柏原が妥当だな。

 ツーコールで柏原は電話に出てくれた。

 「もしもし?」

 「ああ、すまないな。今大丈夫か?」

 「大丈夫だぜ。どうしたよ?」

 「用件は他でもない。被ったアニメの録画を頼みたいんだ」

 そして僕は録画してもらいたいアニメを告げた。すると柏原は難色を示す声を上げた。

 「悪い、この時間帯は姉貴が深夜ドラマ録っててさ。ちょっと無理っぽいわ」

 く、やはり姉の方が権力は上か。あの姉を言いくるめることは出来そうにない。残念だが引き下がろう。

 という訳で柏原との電話を切る。次はどうも非協力的だが…、やるしかあるまい。

 僕は柳谷に電話をかけた。

 「ざけんな」

 出るのも早かったが切るのも早かった。説得する間もなかったなぁ。

 友達なら番組の録画くらいしてくれてもいいのに。

 じゃあ次は…。


 ん…?


 はは、誰もいないじゃないか。


 く、仕方ない。どれか一つを犠牲にするしかないか…。好きなマンガの奴とアニ○ージュで面白そうだった奴にしよう。



 そして翌朝。

 少し早起きしたことだし、一本見ていくか。

 再生っと。

 だが液晶画面に映ったのはジャニーズ顔のイケメン俳優やアイドル顔の女優だった。

 設定ミスったか?

 暫くしてタイトルが流れる。

 好きなマンガの奴だった。どうやらアニメ化ではなくドラマ化だったらしい。

 僕はソッコー消して、夢だったらいいなと思い二度寝した。

 



 柏原だぜ。俺は今林道を舗装された道を外れた、獣道っぽいところを歩いている。同志のタレコミによると、お宝本の目撃情報がこの近辺で報告されたらしい。お宝本ハンターとして見過ごすわけにはいかねぇ。早速調査開始だぜ。

 っていっても一昨日の雨がまだ残ってやがんのか、地面は微妙に湿ったままだ。こりゃブツを見つけても悲惨な状態かもな。


 お、雑誌発見!

 これはもしかするともしかするんじゃねぇか!?

 俺は興奮を抑えブツに近付く。そして意を決してブツを確かめた。


「ちぇ…。マガ○ンかよ」

 どうせならサ○デーかジャ○プ捨てとけよな。読むマンガほとんど無いんだよ…。

 しかもグラビアページだけ無いだと!?

 許されねぇな…。

 グラビアページの無いマガ○ンなんて○ガジンじゃない! こんなこと言ってんの俺くらいなもんだろうけど!

 そんなことよりお宝本だ。お宝本の前ではマンガ雑誌など無価値に等しい。三大欲求の一つの前にひれ伏すがいいぜ!

「おっ…」

 思わず声が漏れる。半裸の女性が表紙の雑誌を見つけたのだ。少年誌の清純な魅力ではなく、まさしく妖艶な魅力。ウヒヒ、同志以外には見せられん顔になってちまうぜ。

 さて早速ブツを確かめに行くか。

 中々妖艶な上バストが豊満なお姉さんだぜ…。しかし湿っててページが貼り付いてそうなのが残念だ。

ま、とりあえず捲れそうなページだけ捲ってみるかな。

 俺は高鳴る胸の鼓動を抑えながらお宝本を手に取る。

 するとムカデやら名称不明の不快虫がワラワラと出てきた。

 「うぎゃあああああああああ!!!!!!」

 思わずお宝本を投げ出し尻餅をつく。どうやら虫達の隠れ家になっていたらしい。ふと手を見ると、一匹の虫が這っていた。

 「っ!?」

 俺は手を思い切り振り回しその場から駆け出した。



 教訓、雑木林に落ちてるお宝本は触っちゃダメ。


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