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第3話・姉貴

 よう、柏原湧だ。残念ながらエロ本は見つけられなかったがまあいい。家にある奴で我慢するか。とある事情で家には俺しかいないはずだしな。

「ただいま~っと」

 ま、誰かいるわけないけどな。父さんは国際ジャーナリストで海外飛び回ってて、母さんは父さんについていっている。

 つまり俺と姉貴の二人暮らしってわけだけど、その姉貴も今はバイト。俺の天下だぜ。

「お帰り、遅かったわね」

 俺の天下一瞬にして崩落。つか何で、どうして、why!?

「どうして姉貴がここに!?」

「ん~? 何かバイト無くなっちゃってさ。店長がミスってシフト入れ過ぎちゃったみたい」

 みたい…じゃねぇよ!

 これじゃおちおちお宝本観賞も出来ないじゃないかよ…。

「全く、世界でただ一人血を分けた姉弟だってのに、そんなに絶望することないでしょうよ?」

 ちっ、まあ姉貴がバイト入る日なんていくらでもあるだろ。お宝観賞会は次に取っとくぜ。

「ああ、そうそう」

「ん?」

「あんたのお宝本、すぐ見つかりそうだから場所変えてあげたから」


 ………?


 えっとお宝本の隠し場所が見つかって、姉貴は親切に場所変えてくれたのか。

「そっか、ありがとな」

「なんのなんの」


 って…。


「アホかぁぁぁっ!!!」

 何処の世界に弟のお宝本の隠し場所変える姉貴がいるんだよ!

 とにかく確認せねば!

 俺は階段を駆け上がり、二階の自分の部屋に飛び込んだ。

 そして隠し場所を確認する。

「そんな…。マジで無いじゃん…」

 俺は膝を落とし落胆した。雨の日、薄暗い中輝いて見えた一冊の本。まさに“お宝”と呼ぶに相応しい 光を放っていた。そんなお宝本を集めウンヶ月。まさかもうお別れの時が来ようとは。


 …いや、まだだ。

 まだお別れには早すぎる。諦めたらそこで観賞会終了。先生…。俺、まだ観賞したいです!

「あぁぁぁねぇぇぇきぃぃぃっ!!!」

 俺は一気に階段を下り、姉貴に詰め寄った。

「俺のお宝本はどこだぁぁぁっ!!!」

「お宝は自分の力で掴み取ってこそでしょっ!! 自分で何とかしなさい!!」

 そうか! 確かに自分で見つけ出したお宝本だからこそ愛着が生まれたと言っても過言じゃねぇ。

 よっしゃ絶対見つけ出してやるぜ!

「そんなことよりご飯にしない?」

 俺は姉貴の気の抜けるような台詞に躓き、そしてテーブルの脚に足の小指をぶつけた。

「ぎゃあああっ!!!」

 急所の次に痛い身体の部位だよここ!

「一人で何悶えてるの? 妄想でも大丈夫な口?」

「ぐぅぅ…。お、弟を勝手にそんなマニアックな道を走らせてんじゃねぇ…」

 しかもそんなゴミ見るような目で。

「いやぁ、お宝本無い頃は妄想でも大丈夫だったんじゃないかと」

 んなわけあるかぁっ!

 少なくとも俺は視覚が満たされねぇとダメなんだよ!

「まあ腹が減っては戦は出来ぬ。お宝本探しはそれからでいいでしょ。パパっとパスタ作っちゃうから待ってて」

 そう言うと姉貴は台所に行った。勝手にお宝本の場所変えて、勝手に飯にしようとしやがる。本当に勘弁してほしいぜ…。

 けど飯作る間に探すことは出来る。さっそく捜索といくか。

 取り敢えず自分の部屋だな。俺はまた二階に上がった。

 自分の部屋を冷静に見渡すと散らかっているのがよく分かる。場所を知ってる俺はともかく、何故姉貴はこんなごみ溜めからお宝本だけを見つけ出せたんだ…?

 姉貴の奴、最初っからお宝本狙ってやがったな。

 何にせよ、部屋片付けないことには捜索どころじゃねぇな。掃除するか。案外その最中に見つかるかもしんないし。部屋が綺麗になってお宝本見つかりゃ、まさしく一石二鳥だぜ。


 こうして俺は掃除を始めることにした。

 脱ぎ散らかした服はまとめて洗濯機だな。いつ着たかも分からねぇのばっかだし。

 いらねぇプリントも全部捨てちまえ。中一の頃のテスト? もちろんいらねぇプリントの一つだ。まあ奇跡的に五十点超えた理科のテストと保健体育のテストは残しておくか。もう二度と五十点なんて超えねぇだろうしな。

 あ! 昔のジャ○プじゃねぇか。三ヶ月に一回のペースで大体廃品回収行きだが、残ってた奴があったのか。

 へぇ~…。



「ご飯出来たよ~」

「あいよ~。って…」

 しまったぁっ! 思わずジャ○プ読み耽っちまった! 俺の一石二鳥の計画が…。

 まあいい。ひとまず飯食って今後の掃除&お宝本捜索に備えるか。


 下に降りると待っていたのはミートスパゲティだった。シンプルなだけに食べ安いから、早く食い終わる。

「んじゃいただきます!」

 フォークでパスタを巻き、口へ運んでいく。

「あ、間違えて唐辛子の粉末入れちゃったけど大丈夫だよね?」

 もちろん俺の手は止まった。舌の痛覚が刺激され、汗が流れる。

「ぎゃあああっ!!!」

 大丈夫なわけあるかっ!

 水を一気に飲み干し姉貴を睨む。

「何しやがんだ!」

「ドジっ娘萌え?」

 もう二十歳のくせに何がドジっ“娘”だ! なんて言ったらどうなるか分かったもんじゃないから、思うだけで止めておく。

「んなもん現実にやられても迷惑なだけだろうが」

「そっかぁ。萌えなかったか」

 んなとこ問題にしてねぇよ! つか何残念そうにしてんだよ! 姉貴に萌える弟が現実にいるわけねぇだろ!

「まあ頑張って食べてね。私も頑張るから」

 フォークでパスタを巻き、姉貴は口へと運んだ。

「かっっっらっ!!! なにこれ、何スコビルあるの?」

「知るか!」

 ちなみにスコビルってのは辛さの単位のことな。

 火を吹きながらも何とかスパゲティを完食し、俺はお宝本捜索に戻った。


 …が、全く見つからねぇ。まさか俺の部屋じゃねぇのか!?

「ようやく気付いたみたいね」

「姉貴…」

「そう、実は私の部屋にあるのよ!」

 それを聞いた瞬間、俺は枕を姉貴に投げつけた。顔面にまともにくらい、固まっている姉貴を尻目に、俺は姉貴の部屋に突入した。

 俺のお宝本は机に置かれていた。

「こっちの方がマズイだろうがぁぁぁっ!!!」


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