表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

第2話・両親

 どうも統夜です。落ちてるエロ本を発見出来ず意気消沈の柏原を元気付け現在19時…。普段18時半には帰宅してる俺にとっちゃちょっと遅い帰還だ。まあ俺の親に限って小言聞かされることは…。

「統夜! 何時だと思ってるの!」

 あった。珍しく母さんが玄関で仁王立ちしている。

 何回か19時回った時があったがキツく言われたことなかったのに、今日に限ってどうしたもんか。

「ただいま。現在の時刻は19時3分だ」

「あらそう。ご飯もうすぐ炊けるわね」

 怒ってたのにご飯の心配? 十年以上この人と親子やってるが、未だに精神構造が分からん。

「とにかく荷物置きに行っていい?」

「どうぞどうぞ…って待ちなさい!」

 小言言ってたこと思い出したのだろうか。

「一回遅くに帰ってきた息子を叱ってみたかったの。ありがとう」

 実の母親が親指立てて極上スマイルを見せてくれた。さて、19時は「遅い時刻」に含まれるのか。息子を叱ってみたかったってどんな神経してんだ。等々ツッコミどころがあるが、無視して部屋へ上がった。

 かばんを部屋へ投げ出しリビングへ足を運ぶ。

 全く、家に帰ってまでツッコミ役したかないっての。

「ただいま~。我が家の大黒柱のお帰りだぞ~」

 父さんが帰ってきたか。今日はやけに早いな。

「おう、我が息子よ。帰ってたか。だが中二になったことだし、道草してタバコふかすぐらいしろ」

「あんな百害あって一利もないもん、吸う奴の気がしれないね」

 自分の息子に何喫煙推奨してんだ。似た者夫婦って言うか…、とかく両親共にボケだから俺の休まる暇がない。

「百害あって一利無し…か。諺なんか使いやがって、品行方正にも程があるぞ!」

 品行方正の何が問題だと言うのだろうか。確かに柏原と比べると真面目な方なんだろうけど。

「でもあなた、統夜ったら今日19時過ぎに帰ってきたのよ」

「なにぃっ!」

 母さんめ、余計なことを…。

「その調子だ。たまには親らしいことするために、どんどんやれ」

 何故に両親共に息子の非行を喜ぶのかね。まあちょっと帰るの遅くなった程度だけど。

「ようし今日は統夜の門限突破祝いだ。母さん、大盤振る舞いにしてくれ」

「じゃあベーコン焼こうかしら」

 ショボっ! おかず一品増えただけじゃん! つかうちに門限なんて無いだろ。あと門限突破祝いってなんだ!?

「ベーコンか。塩コショウ振りまくったら酒の当てになるかね?」

 未成年の俺に聞くな。

「知らないけど、塩分取りすぎで生活習慣病へ大きく前進しそう」

 父さんは自分の腹部を見て台所へと消えた。


「鯖の塩焼きか…」

「ええ」

「塩分控え目でな」

「あら? いつも塩辛くないと酒の当てにならねぇって言ってなかった?」

「…いや、最近味覚変わってな。薄味でも呑めるようになった」

「そう、分かったわ」


 あ、戻ってきた。そして自分の腹部を見つめ、明らかに落胆し座った。

「若い頃は無茶しても平気だったのになぁ…」

 どうやら中年には中年なりに悩みがあるらしい。話の流れからして、塩分過多を注意されたんだろう。

「つかどうして塩分ねぇと酒が進まねぇんだ? 別にケーキとビールでも…。いや、これは無いわ」

 居酒屋でケーキを当てにビール飲んでるリーマン居たらシュール過ぎる。

「鯖焼けたから、配膳手伝って~」

「よっしゃ行ってこい統夜!」

「へいへい」

 俺は腰を上げて台所へと赴く。魚の焼けた良い匂いが俺の鼻腔をくすぐった。

「ご飯もよそって持ってくよ」

「ありがとう。本当に私たちの子供か疑いたくなるくらい、出来た子ね」

「そこは自信持ってよ」

 反面教師の賜物だから…とは言わぬが花ってね。

 お盆に乗せテーブルへと運び配膳していく。家族三人分並んだところで、父さんが音頭を取る。

「んじゃいただきます」

「「いただきます」」

 やっぱ魚と白米は合うな…。

 父さんは大人しく鯖をつついている。だが震えているような…。

「ええい! 生活習慣病がなんだ! 俺は太く短く生きるんだぁっ!」

 父さんはそう叫んで冷蔵庫へダッシュした。

 そして手にしたのは缶ビールと塩コショウの瓶。もはやアルコール中毒じゃん。肝臓に癌が出来そうで心配だな。

「統夜、塩分取りすぎたらどうなるの?」

「血圧上がる」

「うっ!」

 父さんの塩コショウを持った手が止まる。

「まあ、血圧上がったらどうなるのかしら」

「動脈硬化して、そうなった場所によって色んな病気が起こるね」

「ううっ!」

 ああ、悩みが無限ループに入ってるみたいだな。

「さらにお酒何か飲んだら大変じゃない?」

「動脈硬化に関係してるか知らないけど…」

 あ、塩コショウ置いて缶ビールに手を伸ばしやがった。

「発癌率は跳ね上がるね。父さんタバコも吸うし」

「チクショォォォォォっ!!!」

 父さんは雄叫びを上げ缶ビールを握り潰した。

 って何やってんだこの人!?

「母さんタオルタオル!」

 母さんは直ぐにタオルを用意し、こぼれたビールを拭き取りにかかった。

 カッターシャツのまま父さんは食事をしていたので、右裾はびしょびしょ。脱衣場に直行した。

「ちょっと追い詰め過ぎたかしらねぇ…」

 母さんは申し訳なさそうに脱衣場を見る。

 父さんは日本人にしては酒強い方だ。その代わり内臓脂肪付きやすい傾向にある。まあ結果オーライかな。

 ビールを拭く母さんを手伝いながらそう思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ