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第16話・種目を

 楽しかった海の思い出はどこへやら。長いようで短い夏休みを終え、二学期に突入していた。何はともあれ、また学校生活のスタートである。

 始業式はまた校長の話を聞き流して終わった。退屈しのぎに一度真面目に聞いてみようと思ったが、高杉晋作が出てきた辺りで聞くのを止めた。名前は聞いたことあるが、まだ社会科の授業で習っていなかったのでよく分からなかった。

 教室に戻りHRが始まる。珍しく委員長でなく担任が教壇に立った。明日は槍が降るかもしれない。

 「え~、始業式そうそう申し訳ないんだが…。来月の頭に体育祭がある。明日何出るか決めてもらうから、そのつもりで」

 体育祭か…。原田に取って地獄の始まりだな。組体操の練習が放課後に入ってくるようになる。体育教師が必要なしと判断すれば、体育の時間だけで済む。だが原田は壊滅的に運動神経がないので、残らされる可能性が高い。去年は付き合わされて大変だった…。

 「く…、またあの悪魔の行事が始まるのか…」

 そう呟いたのはやはり原田だった。去年のがよっぽど堪えたらしい。

 「そういうわけで、今日は解散~」

 相変わらず気だるさ全快で担任は教室を出た。

 起立も礼もしてないんだが…。

 「委員長、帰っていいのか?」

 「もちろんです。皆さん、去年を反芻して何に出場するか決めて下さいね」

 やっぱり委員長の方が頼りになる。皆は彼女の言葉で帰宅するなり部活に行くなり各々解散していった。



 そして次の日。

 午後の五限目と六限目がLHRとなった。正直二限もかける必要ないと思うのだが。

 「昨日の予定通り、体育祭の種目を決めたいと思います。男女別なので、各々勝手に決めて下さい」

 って委員長の指示が雑っ!? あの担任の悪い影響が出たか?

 取り敢えず男子と女子に別れて決めることになった。まあ種目は男女別なので、ここまでは問題ない。問題があるとすれば…。

 「…誰か何か言えよ」

 「いや、普段委員長仕切ってくれてるから良く分かんねぇんだよ」

 そう、男子に統率力の持った人間がいないということだ。

 ある説によれば、集団の中で優秀な者は二割しかいないという。だがその二割がいなくなれば、残り八割から優秀な者が出てくるらしい。

 つまりどんな集団になっても優秀、この局面でいうなら統率力の持った人間が現れるはずなんだが。

 「ちっ、ウダウダ言っても始まらねぇ。取り敢えずリレーから決めていこうぜ」

 こう切り出したのは、まさかの柏原だった。

 「そうか、こっちにはエロ師匠柏原がいた」

 「ああ、男の生き様エロ師匠柏原ならば俺達を導いてくれるはずだ」

「エロ師匠万歳!」

何故か柏原に変なカリスマがついていた。これが彼の言う同志の連中なのかもしれない。

 「なら運動部にリレー任せるか」

 「おお、知将であり黒幕と噂される柳谷が動いたぞ」

 「ああ、彼の戦略に間違いはない」

 …一体俺はクラスの連中からどう見られていたんだろう。委員長や奥井とツルみ出したからか? 一度自分を見つめ直したくなる。

 「そういや、天野も結構速かったぜ?」

 「本当か?」

 天野を見ると得意気な顔をしていた。そう言えば通知表はオール五とか自慢してたな。その中には当然体育も含まれるわけで、彼の運動神経は疑うべくもない。

 「はーっはっは!! たまにはクラスに貢献するのも悪くないだろう。リレー、出場してやろう!」

 ただこいつ協調性無さそうだから第一走者だな。

 「柏原、ウザいけどこいつ第一走者で」

 「ウザいけど仕方ねぇな」

 柏原は天野の名前を書き込んだ。

 「あ、あまりウザいウザいと連呼しないでくれるか…」

 天野は少し落ち込んだ。まあどうでもいいが。

 適当に運動部員を詰め込み、リレー出場者を決めた。

 「後の種目はどうする?」

 「そうだな…」

 得点の配分が分かれば、一点集中させることも出来るんだが…。

 「種目の得点がはっきりしない以上、戦力を分散させるしかない。スウェーデンリレーを捨て、他は平均化を図る」

 スウェーデンリレーとは走る順番によって走る距離が変わるリレーである。例えば第一走者が五十メートル、第二走者が百メートルといった具合だ。

 「けどよ、去年は障害物競争捨てるクラスばっかだったぜ? 俺らもそうした方がいいんじゃねぇか?」

 柏原の他に合わせた方がいいと考えるのは、勝負においては危険だ。相手をいかに出し抜くかが鍵なのだから。

 「他のクラスが障害物競争を捨てるなら、俺らが拾えば勝てるってことだ」

 「なるほど、流石は知将だぜ」

 知将は照れるから止めてほしいが…。まあいちいち突っ込むと先に進まんし、無視しよう。というかさすがと言われる程のことじゃない。

 「取り敢えず原田、スウェーデンリレーよろしく」

 「分かった」

 あと適当に運動苦手そうなのを詰め込んだ。

 「残りはただの百メートル走、障害物競争、二人三脚か。器械体操が得意な奴は障害物競争、コンビネーションに自信がある奴は二人三脚、残りは百メートルに出てくれ」

 障害物競争に器用体操がいるかは微妙だが、純粋に走るのが得意な奴が入るよりいいだろう。というかそんな奴はリレーか百メートル走に出てもらいたい。

 「流石知将、鮮やかな采配だぜ」

 「やはり彼の戦略眼に狂いはなかったか…」

 クラスの連中から当分知将とか呼ばれそうで怖い。

 「じゃあ俺は障害物競争に出るぜ。圧勝した女子の歓声は俺のもんだ!」

 「流石はエロ師匠、モテそうなことだけを考えていやがる」

 「ああ、彼のエロ眼に狂いはなかったか…」

 こいつの評価は卒業以降も変わらんだろうな。


 あ、ちなみに俺は百メートル走にしておいた。器用でもなければ、コンビネーションに自信があるわけでもないんでね。

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