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第12話・クレープ

 ふっふっふ。どうも柏原です。何故こんな怪しい笑い方をしているかと言うと、委員長からマル秘ネガをもらったからだっ!

 しかもフィルムでっ!

 もう拝めないと思っていた女子達の水着姿、たっぷりと拝見させてもらうぜ。

 しかしまさかセ○サ○ーンがこいつに化けるなんてな…、世の中分からんもんだな。笑いが止まらねぇぜ。

 「グッヘッヘッへ」

 「うわ、笑い方キモっ!」

 「うわぃっ!?」

 バ、ババカなっ!? 奥井が何故ここにっ!?

 取り敢えず落ち着け俺。取り乱したら前回みたく取り上げられるのがオチだ。フィルムは反射的にポケットの中に突っ込んだし、こっから出さなきゃまず問題はないはず。

 「お、お前こそ何してんだよ」

 「私は部活の帰りだけど…。何をそんなに焦ってんの?」

 やべぇよ焦ってるって思われてるよ。何とかして話題逸らさねぇとな。

 「んなことよりお前この辺に住んでんのか?」

 「そうだけど…。入れないわよ?」

 「別にんなつもりはねぇよ」

 チクショウ、家に入れるくらいいいじゃねぇか!

 とか思ってる場合じゃない。上手い具合に話題が逸れたんだ。問い詰められる前に退散するぜ。

 「んじゃ俺はこれで」

 「ちょっと待ちなさい」

 「げっ!」

 今日に限って何故に俺を呼び止める。

 「結局なんでキモい笑い方してたの?」

 一々思い出してんじゃねぇよ! 何のためにさっきまで話題逸らすために必死だったと思ってんだコラ。

 「人間誰しも急に笑いたくなる時ってあるだろ?」

 「いや、特にないけど」

 あれよ! いや実際俺もそんな状況になったことねぇけど!

 「まあそんなことどうでもいいじゃねぇか。部活帰り何だろ? 腹減ってんじゃねぇか?」

 「ん、そうね。そういえばお腹空いてきたかも」

 よっしゃ、脳みそ筋肉女のことだ。きっと食べることを考え出したら他のこと考えられねぇだろ。

 「そんじゃ、さっさと帰って飯食えよ」

 「あれ、おごってやるよってフラグじゃないの?」

 「はぁ?」

 なに厚かましいこと言ってんだこのアマ。運動してる奴に飯おごったら間違いなく破産じゃねぇか。

 「こんな時間に食ったら晩飯食えなくなるぜ?」

 「でもここで何か食べないと家までもたないかも」

 嘘吐けこのアマ! くそ、余計なこと言うんじゃなかったな。

 中2の貴重な夏休みは始まったばかりだ。資金は可能な限り残しておきたい。海やプールに行くためにもな。そしてお姉様方をじっくり観察するためにも! グヘへ。

 となると何か安くて奥井が文句言わない食べ物を探さなきゃならねぇな。

 お、ちょうど良い具合にクレープ屋があるじゃねぇか。これで手を打ってもらうとするか。

 「しゃーねぇ。そこのクレープ屋でいいか?」

 「へぇ、ホントに奢ってくれるんだ」

 「んなこと言うなら奢ってやんねぇぞ」

 「ごめんごめん」

 ったく調子のいい奴だな。さっさと買ってさっさと帰ってもらおう。

 お、ここのクレープ屋の店員綺麗な人だな。こいつはラッキーだぜ。

 「すみません、バナナチョコ二つ」

 「え~。一番安いやつじゃん」

 「一々文句言うな!」

 「ケチ」

 「うるさい。柳谷よりマシだっての」

 あいつはマジで人に奢るところを見たことが無い。ま、奢ってもらうとこも見たことねぇけど。

 「バナナチョコお二つでよろしいでしょうか?」

 「はい。こいつの言うことは無視して下さい」

 「畏まりました。…が、彼氏ならそれなりに甲斐性見せた方が良いですよ?」

 「「彼氏じゃない!」」

 俺らはハモッて否定した。こいつの彼氏なんて冗談じゃないぜ。逆DVに苛まれる毎日が待ってるに決まってる。

 つかこの店員、客に対してなんつーこと喋ってんだよ。さっき綺麗とか思って若干損したぜ。

 「これは申し訳ありません。微笑ましいカップルのように見えたので…。兄弟ですか?」

 「「違う!」」

 こいつと血を分けるなんて、それこそ冗談じゃないぜ。つか全然似てねぇだろうが。

 「あっ…」

 「今度は何だっ!?」

 「喋ってたら焦がしてしまいました」

 「おいっ!?」

 さっきから何なのこの人!? 誰か店長呼んで来て!

 「お詫びと言っては難ですが、お代は結構です。どうぞ」

 って焦げたのもらってもな…。

 「ああ、もちろん焦げてないものをサービスするって意味ですよ」

 俺の怪訝な顔を読み取ってか、店員はそんなことを言い、クレープを差し出した。

 「それなら、まあ、いただきます」

 一応の誠意を見せられちゃ、男として無下にするわけにはいかないからな。内心ラッキーとか思ってねぇぜ。

 奥井もおずおずと受け取り頭を下げた。

 「ありがとうございます」

 「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。懲りずにまた来て下さい」

 店員はそう言って頭を下げた。けどもう行きたいと思わねぇ。



 出来れば座って落ち着いて食べたかったが、良い場所が見つからず歩きながら食べることになった。

 「にしても変な店員だったな…」

 「うん、けど何となく綾に似てたかも」

 綾って委員長のことだよな? あいつは喋ってて焦がすようなミスしそうにねぇけど、敬語の言い回しとふてぶてしさは似てるかもな。

 「姉貴とかだったりしてな」

 兄弟姉妹だからって似るとは限らねぇが。俺のとこみたいによ。

 「ん~、綾にお姉さんいるなんて、聞いたことないなぁ」

 「ふ~ん。ま、世の中にゃ似たような人間が三人いるって言うしな」

 「それって、瓜二つの人が現れた時に使うんじゃないの?」

 「そっか」

 委員長も可愛い部類に入るとは思うが、さっきの店員は綺麗系だったからな。


 …と喋っている間に俺はクレープを食べ終わってしまった。急いで食べたつもりはねぇが、ちと手が汚れちまったな。ティッシュティッシュと。

 「ん?」

 「げっ!」

 ポケットティッシュ出すと同時にフィルムが飛び出した。それを奥井が拾い上げる。

 「これ何のフィルム?」

 「な、なな何だろな~」

 ヤバい、焦り過ぎて焦った反応しか出来なかった。おれ絶体絶命!?

 「何その反応? 怪し過ぎて、思わず中身を確かめたくなるわね」

 奥井は入れ物の蓋を外しフィルムを取り出した。それを透かして見る。何となく、奥井の表情が固まったのが分かった。

 逃げるしかない。本能がそう叫ぶが、足がびくついて動かない。

 「柏原…、まだ懲りてなかったようね。もう一度地獄を見せてあげる」

 奥井は俺の首根っこを掴み、目が全然笑ってない笑顔を浮かべた。

 「ギャアァァァァァァァァっ!!!!!!!!」



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