第11話・ゲーム屋巡り
どうも原田だ。今日はゴミ拾いの報酬として委員長からレア物のレトロゲームを貰い受ける日だ。柏原は貰いそこなったらしいが、僕の方は大丈夫だろう。奥井に没収されるような物じゃないし。
待ち合わせは向こうが学校を指定した。僕と委員長の家の中間地点らしい。お互い家を知らないとなると、ベストな選択だろう。
しかし僕としたことが、少々早く着きすぎたかな。指定の時間よりも三十分も早く来てしまった。だがあのゲームが手に入るとなれば、いてもたってもいられなくなるのは仕方ないことだ。
とゲームに思いを馳せていると委員長が来た。
「お待たせしました」
「いや、僕が早く着きすぎただけだ。気にすることじゃない」
「…こういう時は『今来たとこ』と返すのがセオリーでは?」
確かにギャルゲーのセオリーはそうだが、実際にそう言ってるゲームしたことないな。今度探してみよう。
「…それより例のぶつは?」
「ああはい。こちらです」
委員長はカバンからゲームソフトを取り出した。
…間違いない、僕が探していたゲームだ。
「よく落札出来たな」
「偶然ですよ。それよりハードの方は大丈夫ですか?」
「え?」
「このゲームセ○サ○ーンですけど」
僕はゲームソフトを裏返してみた。確かに今はハードから撤退した会社の名前が書かれていた。
「…ちなみに君は持っているのか?」
「すみません、趣味で落札しただけなんで」
つまりプレイするつもりで落札したわけじゃない。ということはハードの方は持っていない…。
「ってこれじゃ意味無いじゃないかぁぁぁっ!!!」
っと、僕らしくもない。思わず叫んでしまった。
「あ、あの…。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ、問題ない」
委員長は約束通りゲームソフトを持って来てくれた。ハードの問題は僕のミスだ。
「すまない委員長。僕はこれから旅に出る」
「旅って…、セ○サ○ーンを探しにですか?」
「ああ」
行ける限り中古ゲームショップを回るか。この炎天下の中、ただでさえ体力のない僕には辛いが、言っ てる場合じゃない。
「私も行っていいですか?」
「なに?」
思ってもない委員長の提案に僕は動揺した。てかはっきり言って中古ゲームショップ巡りは一人で気兼ねなく行きたい。
「お邪魔なのは重々承知ですが、手伝わないと後味悪いので」
「そんなこと気にする必要は…」
いや待てよ、広いゲームショップだと手分けして探せるし、僕の知らない店を知ってるかもしれないな。
「分かった。手伝ってくれ」
「いいんですか?」
「それは僕の台詞だよ。手伝ってくれるのなら助かる」
そんなわけで僕と委員長は中古ゲームショップを回ることになった。
まず一軒目。チェーン店で古過ぎるものはあまり置いていないが、万が一ということがある。
「じゃあ僕は奥から見てくる。委員長は手前から頼む」
「分かりました」
ハードだからあったら直ぐに分かると思うが、せっかくの人手だ。有効に使おう。
ソフト探すわけじゃないからな。あるとすればショーケースの中等だと思うが…。おっ、これはリト○スの初回生産板…。まさかこんなところでお目にかかれるとは…。いやだが、僕が買おうとしてるのはセ○サ○ーンだぞ? ハードなんだぞ? そこそこの値段になるに決まっている。ここで散財してしまったら…。だが次に来る時にはもう無いかもしれない…。
う~ん…。どうすればいいんだっ!!
「あの…」
「はっ!?」
つい考え込んでしまった。僕の前で委員長が困った顔を…、別にしてないな。いつも通りしれっとした顔をしている。
「すまない委員長。…その様子だとぶつはなかったようだな」
「残念ながら。ソ○ーは大盤振る舞いですがね」
確かにプレイ○テーションは多いな。だが今は浮気している場合じゃない。というよりその資金がない。
誘惑に負けないためにも、早く次の店に行こう。
二軒目。ここは古本も置いてあるよくある形式の店だ。ゲーム専門でないため望みは薄いが一応な。
「さっきと同じように頼むぞ」
「分かりました」
さっそく僕はさっきと同様、奥へと進んだ。ここから先はさっきと同じというわけにはいかない。他のものには目もくれず探さないと、さすがに委員長に申し訳ない。
といってもあるならレジ周辺だろうし、僕が見つける可能性はほとんど無い。
お、これはクラ○ドのアンソロジー…。こういうのに手を出すとキリがないから、あまり手を出さないようにしてるんだが…。
ふう、面白かった。
じゃないっ! 何をやっているんだ僕はっ!
急いで探さないと…。
と振り向くとそこには委員長がいた。
「一応店内全てを見回りましたが、例のぶつはありませんでした」
「そ、そう。すまない委員長…」
「いえいえ。私も見回って楽しみましたから」
「そう言ってくれると助かる」
本当にね。
「じゃあ出ますか」
「ああ。次に期待しよう」
…だが三軒四軒と次々と回っていったが、全く見つからなかった。
時計は四時を指し、小腹が空いてくる頃合いだった。というか何か栄養補給をしなければ倒れそうだ。
ファーストフード店にでも入るかな。
「委員長、あのファーストフード店に入ってもいいか?」
「え? ええ、か、構いませんよ」
一瞬委員長が慌てたように見えたが…気のせいか。
とにかく飯だ。
僕と委員長はファーストフード店に入り、まず席を確保することにした。
「委員長、何がいい?」
「…ではハンバーガーのセットをお願いします」
「分かった」
それならケータイクーポン使えるな。僕もそうしよう。
レジに向かいハンバーガーのセットを二つ注文。もちろんクーポンの提示は忘れない。品物を受けとると僕は席に戻った。
「お待たせ委員長」
「いえ…」
腹が減っては戦は出来ぬ。食べて次の旅に備えよう。しかし僕が知っててこの時間帯でも大丈夫なところあったかな。あまり遅くなると、委員長に門限があったら大変だし。
ん…?
「食べないの?」
委員長はハンバーガーもフライドポテトも手付かずだった。
「いえ、いただきます」
委員長は慌ててフライドポテトを食べ始めた。
何だか時折委員長らしくなくなるんだよな。
「あっ!」
「ん?」
「まだお金払ってませんでしたね」
ああ、そういえば。でもクーポン使ったから、結構安く済んだんだよな。
「いいよ、別に」
「え?」
「今日付き合ってもらったお礼だ。クーポン使って安く済んだし」
「そ、そう言うわけには…」
「いいから。早く食べて次の店に急ぐぞ」
でないと今日中に買えないかもしれない。
「わ、分かりました…」
納得してくれたのか委員長は食べるのを再開した。
ふう、やれやれ…。
「おっ、原田に委員長じゃねぇか。奇遇だな」
僕らを見つけ馴れ馴れしく寄ってきたのは柏原だった。何か大きな紙袋を持っているのが目を惹いた。
「お前らもやるねぇ。デートか?」
「そんなことより、その大きい紙袋はなんだ?」
「そんなことって…。まあいいや。こいつは昔懐かしのセ○サ○ーンだ」
ふ~ん、中々懐かしいもの持ってんだな。
って…。
「「あーっ!!」」
僕と委員長は同時に声を荒げ、中身を確認した。
「間違いありませんね」
「ああ。柏原、こいつをどこで?」
興奮して柏原の肩を掴む。
「どこって、家にあったんだよ」
「家だと?」
「ああ。もう使うこと無いし、姉貴が小遣いの足しにすればって言うからよ。高く売れそうな店探してたんだ」
小遣いの足しにだと? させてたまるか!
「柏原、僕に譲ってくれ!」
「はぁっ!? 冗談じゃねぇ。こいつは俺の小遣いだぞ」
く…。どうせ低俗なエロ本に化けるだけのくせに。
こいつから買おうにも、法外な値段付けられそうだし…。
「あの…」
ん? 委員長は策があるのか柏原になにやら耳打ちした。
「原田さんにお譲りすれば、前回没収されたネガをお譲りしますよ」
「なんだって!」
何を委員長が言ったか知らないが、柏原は引くくらい良い笑顔をしていた。
「原田、こいつをやるぜ!」
「おお、本当か!」
気が変わらないうちにもらっておこう。
「んじゃなっ!」
「ああっ!」
爽やかに柏原は去って行った。
「ありがとう、委員長」
「いえ、柏原君に対するカードは多くありますので」
ああ、柏原は一生委員長には敵わないだろうな。しかしそんなことはどうでもいい。帰ってからゲーム三昧だ!
ファーストフード店を出て、帰路につくことになった。
「本当にありがとう、委員長」
「いえ、私も楽しかったですから」
委員長が楽しい時なんてあったかな? まあいいや、早く帰ってゲームだ!