なぜ無能と言われ婚約破棄された私がここまで復讐に成功してしまったのか
過度な復讐は良くないと言われているのかもしれない。
でも悪いことしたやつが、それ相応の処分を受けるように仕向けるのは、いいですわよね?
「っていうスタンスで私はやってるんです」
「なるほど。はいはい、わかりました」
目の前のイケメンはうなずいた。
このイケメン、お城の国立図書館で推理小説を読み漁っている推理小説大好きな皇族の三男。
私は下流貴族の、推理小説が大好きな令嬢。
ちなみに推理小説は大好きだけど、お互い探偵並みの推理力を持ってるとかじゃ全くない。
でも、少しだけの推理力はある。
今その推理力でもって、二つの復讐をしようと、彼と話し合っているところだ。
彼…エリドは、私に言った。
「まずはどちらの復讐からしようか。レイサの方からの方がいいかな?」
「私の復讐から? いいの? エリドは優しいわね」
「優しいとは限らないさ。二つ目の復讐の方が一個目の反省を踏まえられるという考え方もできる」
「確かに。まあでもとにかく私からいっちゃおうかな」
「了解」
というわけで、まず私の復讐に関して説明しないとね。
私は最近婚約破棄された。
どういう風に婚約破棄されたかと言えば、それまでは政略結婚とはいえ、お互いいい人だと思い合ってるしいいかなーと思っていたのに、向こうが豹変した。
とにかく賭け事にハマってしまった。お金を儲けたいわけではないらしい。珍しいものを賭けたギャンブルに参加してはお金を失うか、謎の毛皮を持ってくるかのような行動をしていた。お金よりも使い勝手が悪い毛皮が成果なのが、なおさら問題な気もする。
負けてばかりの時期はイラつき、私に暴言をはくことが多かった。
というわけで、私は良くない道だと思い、注意をしたのだけど、そしたらなおさら毎日、私を無能だのなんだの罵る暴言ばかり。
最終的には、分かり合えない君はどうやっても愛せないと言われて、婚約破棄された。
しかもその後、勝った場合に持ち帰ってくる成果物(毛皮など)がどうやら盗品らしいと噂が。賭け事の主催者が悪人だったということだろうか。
しかし証拠はなく、私がその噂を聞いたときは婚約破棄された後。成果物も最悪なあの男も、どこかに行ってしまっていた。
「っていうわけなんだよ」
「その男の悪事をしっかり証明していきたいね」
「ほんとほんと。私に暴言だらけだったくせに、さらに盗品を転売してどこかで贅沢な暮らしをしていたら、許せなさすぎるもん」
「というわけで、まずは、レイサのことを婚約破棄した男の居場所を見つけないと。まだ盗品を所持しているかもしれないからね」
「でも全然場所が見当もつかないのよ」
「そういう時こそ推理しないとな。もしまだ盗品を持っているなら、それを隠せる場所も、転売する場所も必要だろう?」
「てことは…港の近くの倉庫らへん!」
「そういうことだな。そこにいる可能性が高すぎる」
「早速馬車で向かいましょう」
私たちは馬車で道を下り、港までやってきた。
ちょうど船着場には、漁から帰ってきた漁師たちがいた。
「すみません。この辺に漁師が使ってない怪しい倉庫知りませんか?」
「ああ、一個あるな。向こうの一番端の倉庫。なんかガラクタみたいなのが集まってるみたいだけど、漁師の連中は誰がどんな風に使ってるか、誰もよく知らないよ」
漁師に聞いたら漁師がそう教えてくれた。
かなり助かる情報だ。
そして現地に行ったら…まさに問題の彼がいた。あっさり見つかりすぎない?
「油断せずに行こう。妙に簡単に見つけてしまった」
「そうだね」
エリドと私は同意し合った。
そして問題の彼に近づく。
「お前…何の用だ?」
向こうが先にそう声をかけてきた。私を見つめて。
「ねえ、あなたが賭け事でもらった賞品に関して聞きたいことがあるんだけど」
「…なんだ?」
警戒されてる気がする。
このままだとまずいかも。
なんか速攻で証拠隠滅とかされそう。
よーし、それなら…
「賞品の中に、以前私にくれようとしたぬいぐるみがあったじゃない。あれもらえないかしら? そこまで高いものではないでしょう? でも私はあれがお気に入りだったの」
「…わかった。お前にやるから少し待っとけ」
そしてしばらくして、問題の彼はぬいぐるみを私に手渡した。
ほうほう。確かに私が以前見たのと見た目は同じ。
だけど…きっとこれは偽物なんだろうね。
「ありがとう。これで用は済んだわ。さようなら」
エリドと私は帰り道早速話し合った。
「これがもし本当に盗品なら、偽物とはいえぬいぐるみをあっさり渡すとは思えない」
「確かにね。このぬいぐるみのデザインから、盗品である事を割り出されてしまうかもしれないものね。偽物だとは思うけど、本当に見た目は賞品と同じだもん」
「てことは…ぬいぐるみが盗品だったんじゃないんだ。他のもそう。賞品自体が盗品だったんじゃない。賞品の中になんらかの盗品が隠されていた」
「なるほど! めちゃくちゃそんな気がする! だとしたら、一体何を隠したんだろう? 小さいものなはず…宝石とか…?」
「かもしれない。となると、僕の方で復讐したいことに繋がっているかもしれないな」
「そういえば! エリドは宝石を盗まれんだったわね」
「そうなんだ。しかも大切にしていた宝石と、財産として持っていた宝石の両方だ。どう考えても僕の元同僚の学者の仕業だと思う。証拠は全くない。だがその学者が研究のために旅に出るとの手紙を送ってきて、僕の前から姿を消したのは、宝石が盗まれた次の日なんだ」
「怪しい動きね…これは先にエリドの方の復讐を進めたら、私の方も一緒に進む可能性があるわね。なら、プランをエリドの復讐モードに変更するわよ!」
「ありがとう。僕のパートナーのレイサ」
「パートナーって…こ、恋的な意味じゃないわよね?」
「うん、違う。推理力がなくてもとりあえず推理して一緒に行動してくれる。これは友人的な意味で素晴らしいパートナーってことだよ」
「はいはい。とても嬉しいお言葉だわ」
私は頷いたけど、内心はまあもうちょっとキュンとする展開とかでもいいなーと思っていたのであった。
で、気を取り直して、その怪しい学者の行方を探すことになった。
正直、私の方がすぐに問題人物に会えすぎただけで、実際人探しというのはとても難しいんだとわかった。
「色々聞いて回ったりしたけどさ、全然手掛かりないね」
「ないなあ…」
「どうする?」
「宝石を盗むなら、それこそ宝石を売りに行く場所が必要だけど、宝石に関してはかなり国境を越える時に検査されるからね。もちろん港とかでも」
「逆に、山道とかで国境を越えた方が検査されない…?」
「いや、どんなに細い道でも検査はされるんだけど…でも山道の方が検査が甘いっていうのはあると思う」
「てことは、その悪どい学者がまだ宝石を盗むのを続けていたとしたら、山道の国境に現れるんじゃない?」
「遠いけど行ってみるか…」
「そうしましょう! 根拠のない推理で行動力を発揮するのが私たちなんだから!」
そして、私たちは馬車で時間をかけて、山道の国境付近にやってきた。
「な、何もない…ここで長い間過ごすのは難しそうね」
「だな…こういう時のために、キャンプセットを背負ってきたんだけど、流石にお嬢様だからキャンプは嫌だよね?」
「別に余裕でできますとも。大体私はお嬢様を自認していませんし、キャンプも楽勝です」
「それならここで丸一日怪しいものが通りかからないか見張ろう」
「ぜひそうしましょう」
とはいえ夜はめちゃくちゃ寒かった!
夜も交代でどっちかは寝ずに見張って、なんか雨も降ってきて、もう疲れ果てて朝を迎えてしばらく経ちましたけど…
「無難な馬車しか通ってなくない?」
「荷物を宝石に紛れ込ませてる可能性はあるが…いや、一応、ここから少し先の門で検査があるはず。それを突破できるはずがない。しかも僕たちを乗せてきてくれた馬車とほか数台の馬車が往復しているだけなんだ」
「私たちが乗ってきた馬車は全然怪しくなかったわよね」
「ああ。元々宝石が積んであるなんてこともなかった。他数台の馬車の中に怪しい馬車があるのか…?」
エリドは考え込む。
そんな中、また馬車が通りがかった。私たちの国から、向こうの国に行く方向。
水たまりが眩しく感じる。
あれ?
私は違和感を覚えた。
そしてしばらくして…
同じ馬車が先程とは逆方向に向かって私たちの前を通った。
「わ、わ、わかった!」
「え、どういうこと?」
「やっぱり宝石を密輸してるよ!」
「どうしてそう思うんだ? 馬車のどこに宝石が乗ってるんだ?」
「底だよ。馬車の底。馬車が通った時の水たまりの眩しさが行きと帰りで違う!」
「なんだって!?」
つまりは馬車の底に宝石を貼り付けて密輸しているのだ。
だから私たちの国から向こうの国へ行く時だけ、馬車が通ると水たまりが光って見えたんだ。
「でも、なんで宝石をむき出しで馬車の底に貼ってるんだ? 袋とかに入れて底に貼り付ければいいのに」
「確かに。まあ袋は袋でデメリットはありそうだな。つまり袋を用意するのにも手間がかかるわけだ。袋を売った商人に顔を覚えられたりするかもしれない。とにかく、今は門の検査場に急いで通告しないと。僕の方が足速いから僕が行くよ」
「いや私もついていく。私もかなり足が速いからっ」
で、かけっこみたいにして国境の門までやってきた。
伝えるべきことは伝えた。
「あとは…その学者とやらがどこかで馬車の底に宝石をつけてるはずだけど…」
「もうそれは警備隊や騎士団に任せよう。もう報告はしたんだから。僕は疲れた」
「あんたの方がキャンプ向いてないおぼっちゃんじゃないの!」
というわけでエリドが大変軟弱であったため、私たちは帰ることにした。
で、数日後。どうやらエリドが復讐したがっていた学者とやらは捕まったようである。仲間もまとめて捕まったらしい。
「すぐに馬車の底を調べるんじゃなくて、警備隊が馬車を尾行にして、悪徳商人たちが宝石を保管している場所を突き止めたらしいよ」
「なるほど。頭いいわね。それでまとめて捕まったのか」
「そして一番驚くのが、その宝石を保管していた場所だよ」
「まさか…」
「僕たちが行った、港の近くの倉庫だったんだ」
「ええっ。でも待ってよ。結局港からは輸送してなかったのに、なんであんなところに?」
「実は港からも宝石を輸送していたらしいよ。そっちでは船底につけてね」
「船底…ワイルドねえ」
「てことは、もしかして、私が恨んでいるあの男も…」
「どうやら関わっていたみたいだよ。つまりまとめると、宝石の密輸ルートは、悪質な賭け事、賞品の中、港の倉庫、船や馬車の底に貼り付けて他の国へ…っていうことだったんだ」
「なるほど! 全貌がわかってスッキリね!」
こうして私が恨んでいたあの男も捕まった。
私は思う。
根拠のない予想をもとに一緒に行動してくれたエリドがいたからこそ、今回のことができたって。
「ねえエリド」
「うん」
「久々に国立図書館に行かない?」
「いいね。僕らと違って論理立てた推理ばかりする人たちの活躍の書を、久々に読みたいなと思っていたところだよ」
「私もそんな感じ」
国立図書館ってのは、結構立派な趣深い丸い屋根、そして平たく広がった四角形の建物の、地下にある。
むしろ地上の建物の部分は、なんのために使っている施設なのかよくわからない。
私とエリドは、そこそこ仲良しなので、非効率なことを国立図書館でも一緒にすることになってしまった。
「一緒に同じミステリーを読み進めるって…読むペースとか人によって違うしなあ…」
エリドがいい始めたくせに読み始めてみたらそんなこと言うので、私はいい返した。
「いいじゃん。推理を話し合えるから一緒に読み進めようってことになったんでしょ?」
「そうだったな。で、今のところは犯人誰だと思うの?」
「ふっふ。馬車の底に宝石があることに気づいた私の頭脳によれば、犯人は主人公の親友だね」
「これ主人公の親友が10人くらい出てくる話だけど…」
「ふん! まだその中の誰かはわからなくて当然よ。多分証拠や伏線がまだ出揃ってないと思う」
「あ、そう。僕はそうは思わないし、もう一人に絞れているけどね」
「え、ほんと!?」
「誰か教えようか?」
「いや、もうちょい自分で考える」
「そうか。ならヒントとか欲しくなったら、いつでも言ってな」
「うわ。なんか先生みたいなポジションでムカつく……」
でもちょっとくらいだったら、そんな風にエリドに優位に立たれるのも悪くない気がする。
だって彼は偉そうじゃないし。
☆ ◯ ☆
そんな彼と私が結ばれるのは一年後。
彼と暮らす部屋には、大きな棚があって、そこにはたくさんの推理小説がある。
そこで幸せに夫婦で推理合戦をするのが私たちの生活だ。
お読みいただきありがとうございます。
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