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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 6 (2026.1~)   作者: 四季


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かつて愛した人がいました。~私はもう乗り越えたのです~

 目が痒い。

 軽く掻く。


 誰にでもあることだろう。


 もちろん私にだってある。


 だがそれは私にとっては些細なことではない。

 とても大きな意味を持つことだ。

 それはもう一生忘れられないかと思うほどに。


 ――かつて愛した人がいた。


 婚約者だった彼のことを私は純粋に信じ想っていた。


 彼とならきっと幸せになれる。

 今思えば馬鹿みたいな信頼。

 けれどもその時の私は何の迷いも躊躇いもなくそう思っていたのだ。


 ……何も知らなかったから。


 だが、たまたま目が痒くて軽く掻いていた時に、彼から告げられることとなる――関係の終焉、婚約破棄、を。


 軽くだとしても目もとを掻くような女性は無理、とのことだった。


 それによって私の世界は一気に崩れた。


 信じてきたものは壊れ。

 愛しかったものは消え。


 私が見ていた世界に確かにあったはずの色と光は一瞬にして無となった。


 結局、彼は元々こっそり浮気をしていてその相手と結ばれたいがために雑な理由をつけて婚約破棄した、というだけの話だったのだけれど。


 どうやら、実際のところは、目を掻いていたから婚約破棄されたというわけではなかったようだ。でも、あの時はそれを理由にされていたから。それ以来ずっと目もとを掻くことは怖かった。もし誰かに少しでも見られてしまったら、と、つい考えてしまって。手で眉に触れることすら恐ろしかった。


 でも今はもうそこまで気にしていない。

 なぜなら良き人と結ばれることができたから。

 ふとした瞬間にあの時のことを思い出すことはあっても、それ以上でもそれ以下でもなく。ただ、事実として思い出すだけだ。


 ちなみにそんな心なかった彼は、後に婚約した当時の浮気相手の女性と揉め、女性が呼び出した怖い男衆に痛い目に遭わされたそう。以降彼は女性恐怖症になってしまったらしく。女性を見ると意識を失う、といった状態が、ずっと続いているそうだ。

 そして浮気相手だった女性もまた異性関係で痛い目に遭ったらしく。彼女の場合はこじれにこじれたその果てで相手の男性に命を奪われてしまったのだそう。彼女の最期は酷いものだった、と、誰かが言っていた。


 目が痒い。

 軽く掻く。


 誰にでもあることだろう。


 もちろん私にだってあること。


 今でもそんな時はある。

 過去を思い出すことも。


 ただ、それでも、私はもうあの頃の私ではない。



◆終わり◆

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