大切にしたいものを抱き締めながら。~彼は勝手に自滅したようですね~
また朝が来る。
あれからどのくらいの時が流れたのだろう。
婚約は破棄とする――人生を共にすると思っていた相手からそんなことを告げられて。
あの時の衝撃は信じられないくらい大きなものだった。
彼のことを疑ったことは一度もなかった。
今思えばそれが間違いだったのかもしれないけれど。でも、そのくらい純粋に信じていたからこそ、明日に不安を感じることなく生きていられたのだ。
けれども、だからこそ確かだと思っていたものを叩き壊された衝撃も限りなく大きくて。
たった一つのことだとしてもそこから受ける影響は非常に大きかった。
それから時がかなり流れた今でも、私は、ふとした瞬間にあの時のことを思い出すことがある。そういう時は悲しくなってしまう。ただ、その悲しみは一時的なもの。だから少し時間があればすぐに今に戻ってくることができる。過去の悲しみは当時の悲しみ、ゆえに、永遠に引きずっていくようなものではない。
私には未来への希望がある。
だから迷いはしない。
大切にしたいものを抱き締めながらこれからも真っ直ぐに進んでいくつもりだ。
……ちなみに、元婚約者である彼は、あの後結婚詐欺師の女性が仕掛けた罠にまんまとはまってしまい資産をすべて失うこととなってしまったらしい。
◆終わり◆




