尋ねておいて答えたら不快そうにするなんて問題だと思います。
「なぁ、マンモスって知ってるか?」
ある日のこと。
婚約者である二つ年上の彼ダンバが唐突にそんなことを尋ねてきて。
「マンモス? 知ってるわよ。ゾウの親戚みたいな生き物でしょう? 実際に見たことはないけど聞いたことならあるわ」
深く考えず答えたところ。
「あーそう……」
何やら思考しているような顔をされ。
「ま、いいや。決めた。あんたとの婚約、破棄するわ」
そんなことを言われてしまった。
頭を殴られるような衝撃。
即座には理解できない。
「え……何を、言って……」
「だから婚約破棄だって」
「……ごめんなさい、ちょっと、意味が分からないわ」
「耳が遠くなってしまったってことか?」
「そうじゃなく」
「じゃあ何なんだよ」
「いきなり婚約破棄だなんて、意味不明じゃない」
「だとしても決定は決定だから!」
ダンバは腕組みをしながら不快そうな顔をしてくる。
「女なら、そこは知っていたとしても知らないって言うべきだろ」
「何を言っているの……?」
「マンモスの話だよ! 知っていることを口から出して男に競ってくる女なんて女の中で最も低級な女だろ」
「ごめんなさい、意味不明すぎて……私はただ事実を答えただけよ」
「そういう問題じゃない!!」
「えええ……」
滅茶苦茶な理論を出され困惑していると。
「女なんならさ、もっとさ、慎ましく、男を立てるべきだろうよ。それがいい女ってもんだろう。あんたは何にも分かってない、だからそういう失礼なことばっかりやらかすんだ」
彼は大量の言葉を吐き出してきた。
「あんたみたいな女を愛する男なんてこの世には一人だっていないだろうよ。決まってる。絶対的なことだ、それは。あんたはこの先一生一人。あんたは一生国に生きていくことになるんだ」
さらにはそんなことまで言ってくる。
「じゃあな、さよなら」
極めて不快な別れの時であった。
◆
あれから五日が経ち、ダンバは川に転落し流されてしまい落命した。
一方私はというと。
ちょうど彼が流れていったと思われるその日に、一人の男性と運命的な出会いを果たした。
何だか未来に希望を抱けてきた気がする。
今はまだ何も分からない。けれども、今はただ、彼と行く未来を見つめていたい。明るい未来を掴める、そう信じて、真っ直ぐに一歩一歩進んでゆきたい。
◆
あの婚約破棄からちょうど二年となる今日、私は結婚式を挙げた。
今日はダンバが川に落ちて流れされた日。彼の最期の日。彼にとって最も不幸な日であったその日は、私にとって人生において最も幸福な日となった。
◆終わり◆




