聖なる夜に意外な展開が待っていました。~ここからはそれぞれの道を行きましょう~
今夜は聖なる夜。
多くの者が特別なその瞬間を温かな空間で祝う。
……が、私はややこしいことに巻き込まれてしまっている。
「お前との婚約は破棄することにしたから」
「それ……本気で言ってるの?」
「当たり前だろ。こんなくだらない嘘、つくはずないだろ。俺は本気だよ」
婚約者である彼エリードスが突然やって来てそんなことを言ってきたのだ。
穏やかに、楽しく、過ごすはずの今夜だったのに。これではどうしようもない。こんなことになってしまっては、楽しく過ごすなんて夢のまた夢だ。今年の聖夜は終わったも同然。
「だってさ、お前といても楽しくねえんだもん」
「それが理由?」
「ああ! そうだよ! だってさ、だってさ、おもんねえんだよ、お前。おもんねええええええええええええええッ!! ってなるんだ、お前といると。お前が俺に教えてくれたことは、人生ってこんなに面白くないんだな、ってことだ」
エリードスはそんな風に言葉を紡いで。
「じゃあな。バイバイ」
最後、そう吐き捨てて、去っていった。
……まさか聖なる夜にこんな出来事が待っているなんて。
予想外ではあった。
でも仕方ない。
彼にはもう私と一緒にいる気は欠片ほどもないのだろうから。
他者の心を変える、それは人間にはできないことだ。
彼がそう決めたのなら彼にとってはそれが決定事項なのだ。そこに他者があれこれ言うことはできない。いきなり婚約破棄というのはさすがに迷惑すぎるけれど、でも、彼の中の絶対的な決定事項を他者が書き換えることは不可能に近い。
ならば、私は私で生きてゆくだけ。
彼とは終わったのだから、もうこれ以上彼とのことは考えない。
ここからはそれぞれの道を行こう。
お互いが求めるもののために。
◆
あれから数年が経った。
今夜は聖夜。
あの時の悲しみはもう消え去った。
私はもう過去に縛られてはいない。
「今日さ~、アップルパイ作ってみたんだ」
「えっ、すご!」
「前に一回試して作ってみた時さ、褒めてくれたでしょ~? それで、また作ってみようかなって思って。食べてくれる~?」
「ええ、ええ、もちろん! とっても嬉しいわ!」
私は今、愛する人と共に、同じ屋根の下で暮らしている。
愛する人がいる。
愛してくれる人がいる。
それだけで私は生きてゆける。
……ちなみにエリードスはというと、あの後別の女性と婚約するも婚約期間中に何十回も浮気したために女性とその親に激怒され、婚約破棄されたうえかなり酷い目に遭わされたそうだ。
一応命だけは残っているようだが。
それでも失ったものは多く。
普通の生活はできない状態となってしまっているようだ。
だがそれは災難ではない。
彼は酷いことを繰り返してきた。私にも、その女性にも、きっと。だから幸せな未来は手にできなかったのだ。彼の悪しき行いは彼の身に返った。彼の身に起きた不幸は彼自身の行いが招いたもの、だから彼は可哀想な人ではない。
◆終わり◆




