重要な話があるからと呼び出され何を言われるのかと思っていたら……そういうことですか。
柔らかな風が吹く。
髪を撫でていく。
静けさの中で向かい合っているのは――婚約者である彼ルレイス。
「重要な話って何ですか?」
尋ねてみれば、彼は意を決したように口を開く。
「きみとの婚約は破棄とすることとした!」
告げられたのは二人の関係の終焉。
「婚約破棄? また急ですね……どうして」
「ぼ、ぼくは! 決めたんだ! きみと一緒には生きていかない、と!」
「そうですか……もっと良い相手が見つかったとかですか?」
「なっ……な、ななな、な、なん、なななななっ……どうしてそんな失礼なことを言うんだ! 無礼者! 無礼者すぎる!」
突然怒り出すルレイス。
「ぼくがそんな汚い男だと、きみはそう言いたいんだな!?」
「いえ、あくまで単なる予想です」
「や、やや、やっぱり! じゃないか! きみはぼくをそういう人間だと思っているってことじゃないか!」
「そういうものでしょうか」
「ああ! そうだ! そ、そそ、そういうこと! だよ! それは!」
彼は「なんて失礼な女なんだ!」と大きな声で吐き捨て、そのままぷいっと顔を背けて去っていった。
◆
あの婚約破棄から数年。
私はあの後良き人と巡り会うことができ結婚して幸せになることができた。
結婚だけが幸せだとは思わない。
けれども私が選んだ幸せはそういう形のものだったのだ。
婚約破棄された直後は「もう二度と婚約とか結婚とかとか関わりたくない」とか言っていた時期もあった。けれども気が合う人と出会えたことでその気持ちは百八十度変わり。大切にしてくれる人となら、大切にできる人となら、同じ未来を見つめても良いかもしれないと思うようになっていった。
今、私は、ここに在る幸せを何よりも大きな幸せだと思っている。
だからもう迷わない。
愛おしいものを抱き締めて。
護るべきものを護りながら。
ただ、歩んでゆく。
ちなみにルレイスはというと、あの婚約破棄の後彼自身が惚れていた女性と婚約するも一緒にいる間ずっと暴言を吐かれるようになってしまいやがて破局――その後彼は衝動的に自ら死を選んでしまったそうだ。
◆終わり◆




