婚約者の心は変わってしまったようです……。~彼がどうなったとしても可哀想とは思いません~
『リリーとなら絶対幸せに生きていけるって思える! だからずっと好きだよ、大好き!』
婚約者である彼ディアドンは婚約する前そんな風に言ってくれていた。
だから私は信じていた。
彼となら上手くやっていけるものと。
……けれども彼は変わらない心でいてはくれなくて。
「ごめん、婚約は破棄するわ」
ある日突然そんなことを言われてしまった。
「え……」
「聞こえなかった? ごめん。でもさ、この大きさの声が聞こえないってヤバいよ。リリー、もしかして老人? あっはっはは。ごめんごめん冗談。でもさ、はっきり言われて聞こえないとかちょっと耳治療した方がいいよ」
「そうじゃなくて」
「え。……じゃあ何?」
「あまりにもいきなり過ぎたから……戸惑ってしまったの」
すると彼は大笑い。
「そういうこと! あーあーあー、なるほど、そういうことかぁ! あっはっははっははは! なるほどなぁ! そういうことか! あっははっはは! あははっはっははは!」
馬鹿にするような笑い声を放つ。
「でもさ、何を言っても無駄だよ。僕の心はもう決まってるから。リリーが何を言ったって無意味だから」
明るくて前向きで優しいディアドンはどこかへ行ってしまったようだ。
「じゃあな、バイバイ」
こうして私は一方的に切り捨てられてしまったのだった。
婚約破棄から数日、ディアドンが亡くなったという話が耳に入ってきた。
彼は酒場にて惚れた女性がいたらしい。どうやら婚約破棄したのはその女性と結ばれたいと思ったからだったようで。しかしいざ声をかけてみたらまったくもって相手にされなくて。自分に婚約者さえいなくなればその女性と上手くいくと純粋に信じていた彼は、思った通りにいかない現実にかなり大きな衝撃を受けてしまったようだ。
そして、生きることに絶望し、自ら命を絶ってしまったのだそう。
そんな結末を迎えることとなるなんて悲しいことだ。
……けれども可哀想とは思わない。
彼は私を切り捨てた。自身の欲望のために。そんな彼が痛い目に遭ったとしても、私からすればどうでもいい。彼は私を傷つけた、だからその彼がどうなろうとも気の毒とは思わないのだ。自業自得でしょ、と思うだけで。
あれから数年、良き人と巡り会うことができた。
花好き仲間として出会った彼と仲良くなり結婚できたことは私の人生において最大の幸福だった。
◆終わり◆




