かつて同じ未来を見つめていた私たち、今はもう……どうやらここからは共には行けないようですね。
私エミリーと彼ディヴァスは婚約者同士。
お互い魔法の実を育てる仕事をしていた。
それで気が合ったこともあってある程度の年齢になった時に婚約という契約を結んだ。
しかし婚約から半年ほどが経つとディヴァスは魔法の実を育てることに興味を持たなくなってしまった。
……なんでも気になる女性ができたらしい。
それによって彼は仕事などどうでもよくなったようで。
少し前から一緒に育てていた樹も放置して。
そんな人ではなかったはずなのに、ただひたすらにさぼり続け遊んでばかりいる人となってしまった。
「ねえディヴァス、魔法の実はもうどうでもいいの?」
ある時そう言ってみたら。
「ああ、どうでもいい」
彼は平気でそんな風に返してきた。
「一緒に育てていきたいって言っていたじゃない」
「当時はそう思ってたよ」
「それはつまり、今はもうそうは思っていない、ということ?」
「そうだな、そういう感じ」
共に見つめていたもの。
進みたかった未来。
恐らくそれはもう壊れてしまったのだろう。
二人共に行く希望に満ちた明日はない……。
「酷いわ、そんなころっと心変わりするなんて」
「知るかよ」
「無責任よ」
「はーあ。うーぜっ……あのなぁ、ごちゃごちゃ言ってくるなよ、そんな小さいことでよ」
ディヴァスはわざとらしく大きな溜め息をつく。
「小さいことじゃないわ! 私たちの夢だったのよ、魔法の実を大切に育てていくということは」
「くっだらね」
「大切な夢だった。それを否定するのはやめて。さすがにあり得ないわ」
すると彼は眉間にしわを寄せて「あーあーあー分かった分かった。ババアはもう黙ってろ。もういい、お前との婚約は破棄だ!」とはっきり言った。
「じゃあなエミリー。あんま怒んなよ、もっとババアになるからな」
私たちの道は崩壊した。
……でもそれで良かったのだと思う。
今や私たちは同じ未来を見つめることができていない。彼は女に染まり、私は夢のため生きている。見ている方向が明らかに異なってしまっているのだ。そんな状態で結婚しても上手くやっていけるはずがない。
悲しいことだけれど、終わりにするのが最善の道だったのだと思う。
◆
あれから十年。
不治の病すら治す魔法の実を育て上げた私は、国王から表彰された。
そして大きな賞を貰うこととなる。
一生裕福暮らしを約束されるほどの大きな表彰であった。
「エミリーさんは凄いなぁ、魔法の実に人生を懸けていらっしゃるなんて」
「尊敬できるわねぇ。偉大だわぁ。尊敬しすぎて脳が増えそうだわぁ」
「ボクも将来魔法の実を育てたいな! すっごい実を! で、エミリーさんみたいにかっこいい存在になりたい!」
今や誰もが私を称賛する。
絶対的な地位を手に入れた。
ちなみにディヴァスはというと、あの後片想い相手の女性に貢ぐために実家の資産を使いきってしまったそうだ。で、両親から勘当を言いわたされたうえ家から追い出されたそうで。やがて、寒空の下、息絶えたそうだ。
◆終わり◆




