なぜそのようなことをしてくるのですか? やめてください、って、前にも言いましたよね?
遭遇するたびになぜかやたらと唾を飛ばしてかけてくる婚約者ディヴェオルとばったり出会ってしまったのは街中であった。
「ヨ! 元気カ! ぷっ」
「ああ……ディヴェオルさん、こんにちは」
「コウシテバッタリ会ウナンテナ! ぷっぷっ」
やはり彼は今日も唾をかけてくる。
上手く身体を動かせたので何度か回避することには成功したけれど。
「あの、唾をかけるのはやめてくださいって、前もお願いしましたよね?」
「ハァ? ハアア? っぷ」
「ほらまた!」
「ナーンモシテナイケド? ぷっぷ」
「かけてきているじゃないですか……」
すると彼は急に睨んできて。
「ウルサイナ! イッチイチソンナコト言ッテ絡ンデキヤガッテ! っぷっぷぷっ。モウイイ! 婚約ハ破棄ダ! ぷっ。破棄シテヤル! 破棄破棄破棄破棄婚約破棄スル! っぷっぷぷっぷぷ」
そんなことを言い放ってくる。
「婚約破棄ダア!!」
……婚約破棄? ラッキー。
なんて思ったけれど黙っておいた。
本心を口から出してしまったら嫌がらせで撤回されてしまうかもしれないから。
「そうですか……仕方ないですね、では、受け入れます」
「ハイハイハイハイ! 決マリ決マーリ!」
こうして私は思わぬ形で彼から解放されることとなったのだった。
◆
――あれから二年八ヶ月。
「これからよろしくね、ローイ」
「こちらこそ! よろしく。いつまでも一緒にいよう! 絶対幸せにするよ!」
私は愛する人と結ばれることができた。
今はとても幸せ。
幸福の頂に立っている。
一方ディヴェオルはというと、路上で通りすがりの女性に唾をかけるという行為を繰り返したために捕まり牢屋送りとなってしまったそうだ。
◆終わり◆




