幸せな未来を信じていたのですが、砕け散ってしまいました……。
「これからずっとよろしくな! メリア!」
「ええ、こちらこそ。いつまでも仲良しでいましょうね。よろしく、ダイゼン」
私メリアと彼ダイゼンは幼馴染みで婚約者同士となった。
その時私は何の迷いもなく幸せな未来を信じていた。
長期間仲良しでいた彼とならこの先どんなことがあってもそれなりに上手くやっていけるものと思っていたのだ。
……でもその予想はあっさりと砕け散った。
「悪い、メリア、お前との婚約は破棄とすることにした」
突然やって来た終焉。
彼は平然と関係を叩き壊す言葉を発する。
「そんな……どうして?」
「メリアより魅力的な女の子に出会ったんだ」
「そ、それが理由?」
「ごめん。びっくりさせちまったよな。けど! 仕方ないんだ! 彼女はめちゃくちゃ魅力的だから! もう絶対に手放せない!」
ずっと仲良しだったのに、未来を誓い合ったのに、それなのに私を捨てるの? しかもそんなにあっさりと? 申し訳なさそうな顔をすることすらせず、ぽいっとしてしまうの?
どうしてそんなこと、と思わずにはいられない。
「酷いわダイゼン。どうしてそんなこと言えるの。なぜ平気で切り落とせるの」
「はあ……面倒臭いな」
「信じられない」
「うるさいな、いちいち! しつこいんだよ、何回も何回も! ったく、いい加減にしろよ」
この時の彼は私が知る彼ではなかった。
どうやらその心はこちらへは欠片ほども向いていないようで。
きっとだからそんなにも冷たいのだろう。
これまで私が関わってきたダイゼンであればこんな心ない接し方はしてこなかったはず。
……ああ、きっと、彼はもう彼ではないのだ。
その事実に気づいた時は悲しかった。
でも泣いている暇はなくて。
だから迫りくる波に押し流されることしかできなかった。
心の整理を素早く済ませることはできない。
私はそこまで強い人間ではないから。
けれど少しずつ思考を整えてゆくことはできるし一歩ずつでも前を向けるように心がけてみることはできる。
できることからやっていこう――そう思って、生きる。
◆
婚約破棄から数週間、ダイゼンはこの世を去った。
ダイゼンが惚れていた女性、名はリリというそうなのだが、彼女には実は婚約者がいたそうなのだ。にもかかわらず彼女にアプローチしてしまったダイゼンは彼女の婚約者に嫌われ攻撃されることとなってしまい。ある晩、リリに会いに行ったところその男性に襲われ、揉み合いになった果てに転倒して落命してしまったそうである。
あの時ダイゼンは『メリアより魅力的な女の子に出会ったんだ』とか『もう絶対に手放せない!』とか言っていたけれど、実際にはダイゼンの片想いでしかなかったようだ。
私にも、リリにも、その婚約者の男性にも、非はなかった。
ダイゼンだけが間違えた。
だから。
彼一人だけが自然な流れで破滅した。
◆
ダイゼンがこの世から去って半年ほどが経った。
あっという間に半年だった。
それほど長い期間ではないけれど私の人生的な意味合いで見ると大きな変化があった。
特に大きかったのは、純粋に愛せる人と出会えたことだ。
知り合いの紹介で顔合わせした男性と気が合って。
互いを大切に想えるようになっていった。
今は共に行く未来について考えるようになっているほどである。
もうじき婚約する予定。
その時の訪れが楽しみで仕方ない。
分からないことも多くある。不確かな要素も。けれども今は自分が信じる道を信じられる。目の前に愛おしい人がいてくれる、からこそ、希望溢れる未来を迷いなく見据えることだってできるのだ。
◆終わり◆




