あの時、泣いていても生きることを選んで良かったです。
柔らかな風が吹いている。
見上げた空には白い雲。
時の刻みを表現するかのように流れてゆく。
(……あの時、泣いていても生きることを選んで良かった)
かつて私は絶望に堕ちた。
というのもとても愛していた人に婚約破棄を告げられてしまったのだ。
しかもまともな理由があってのことではなかった。
こちらに非は一切ないにも関わらずの婚約破棄だったから、なおさら悲しく切なく辛かった。
それでも何とか耐えて懸命に生き延びて――それで今日がある。
今、私は、とても幸せだ。
愛する人がいて。
結ばれていて。
互いに寄り添い合うことのできる関係を築けている。
……こんなに嬉しいことはない。
だから私はもう迷わない。
ただひたすらに進む。
ここから先は大切なものを護りながら歩んでゆく。
絶望の色は一度目にした。だから怖いものはない。どんな闇もあの時の絶望には敵わない、だから私が恐怖を抱くことはない。
すべて振り払って、すべて切り裂いて、そうやってどこまでも強く進んでゆく。
過去は過去。
現在とは交わらない。
なぜならその狭間には絶対的な壁があるから。
だから過ぎ去った物事を恐れる理由はない。
今を見つめよう。
明日を信じよう。
そうやって歩んでゆけばきっと――幸せな人生を掴めるはず。
◆終わり◆




