私は価値のない女ではありませんでした。……そう思っていたのはどうやら貴方だけだったようですね。
『お前なんか価値のない女なんだよ! だから心の広い俺にも婚約破棄されるんだ! 分かったか? ただそれだけ、そういうことなんだよ!』
最後に彼が投げてきたのはそんな心ない言葉だった。
あの時私は彼を愛していた。けれどもその想いが理想的な形で成就することはなく。大切に抱き締めていた想いは彼の選択によって叩き壊された。愛おしく思う気持ちも、共に生きたい支え合いたいという気持ちも、一瞬にして粉々になってしまった。
◆
「ユーリ、何してるんだい?」
「写真を見ていたの」
「写真?」
「ええ。昔の。家族写真」
「そうだったんだ」
あの婚約破棄から三年が経った現在、私は、三つ年上の青年ラヴェンジと共に暮らしている。
私たちは夫婦だ。
悲しくて苦しくてどうしようもなかった時、絶望の海から私を救い出してくれたのはラヴェンジだった。
だから彼には大きな恩を感じている。
そして同時に異性としても想っている。
「僕も見ていい?」
「もちろん」
「わ。とっても綺麗に写ってる」
「ほんと? ありがとう」
彼と隣り合っていられる時間よりも尊いものはこの世にはないと思う。
「これは?」
「ああ、それね、私が小さい頃に親から貰って大事にしてたぬいぐるみなの」
「ちょっと独創的なデザインだね」
「変かしら。一応うさぎなの」
「いや可愛い!」
「本当に思ってる?」
「もちろん。個性派ぬいぐるみを大事にしてるっていうのもすごくユーリらしくてほっこりしたよ」
ちなみに元婚約者であった彼はあの後少ししてこの世を去ることとなった。
というのも異性の友人に誘われて詐欺に加担していたところ激怒した被害者に突撃され殴られて命を落としたのだそう。
……ま、自業自得か。
◆終わり◆




