理不尽に婚約破棄しておいて……今さらそんなこと頼みますか? あり得ませんよ!
「おはようダリア」
「あ、おはようございます。ローリンさん」
いつもはあまり構ってこない婚約者ローリンが私の家にまでやって来たと思ったら。
「伝えたいことがあるんだ」
「そうですか」
「君との婚約だが、破棄とすることにした!」
「ええっ」
まさかの言葉を放たれて。
「ではな。さよなら。……永遠に、お別れだ」
そのまま二人の道は別れた。
◆
あの後少ししてローリンが私の前に現れた。
何でも酒場で知り合った女性に騙されかなりの額のお金を失ったらしい。
それで当面の生活費を支援してほしいとかなんとかで私に会いに来たということのようだった。
「私たち、もう他人ですよね」
「婚約していた仲だろう!」
「過去のことです。それに、婚約破棄したのは貴方ではないですか」
「だ、だがっ……」
「縁を切ったのはそちらですよね?」
「それは……まぁ、そう、だが……しかしその原因を作ったのは君じゃないか」
理不尽に婚約破棄しておいて自分の状況が悪くなったら助けてもらおうだなんて身勝手にもほどがある。
「お帰りください」
「は、はぁっ!? なぜ! なぜ助けてくれない!? 困った時はお互い様、と言うだろう!」
「貴方が私を助けたことがありましたか?」
「生意気なッ!!」
「思い返してみてください。……ありましたか?」
「ぐ、ぐぬぅっ……」
私はもう彼とは関わらない。
なぜなら関わりたくないから。
婚約破棄ですべては終わった。
私はこれから私の人生を歩んでゆくつもり。なのに今になって出てこられても迷惑の極み。謝罪しに来たというならまだしも、こんな理由で寄ってくるなんて、あり得ないし理解不能。
「そういうこと、ですよ」
この際、はっきり言ってやる。
「二度と私の前に現れないでください」
助けてほしい? 支援してほしい? そんなこと、できるわけがないだろう。友でもない、婚約者でもない、身内でもない、ただの他人ですらない、そんな人のためにお金を出す? 勝手な行動で自分を傷つけた人のために私が頑張る理由なんてあるわけがない。
◆
それから数日、ローリンは毎日のように私の家へやって来てかなり迷惑だった。
そんなある日、彼は、数時間にわたって大声で暴言を発してきて。不快に思うと同時に私の身を案じてくれた近所の人がローリンのことを通報してくれた。で、それによってローリンは治安維持組織に拘束されることとなる。
その後彼は国の一番北の年中極寒な地域へ送られたらしく、そこで命尽きるまで労働させられることとなったようだ。
ちなみに私はというと、婚約破棄から二年ほどが経って親の紹介で知り合った明るい性格の青年と結婚した。
彼はやたらとダリアダリアと絡んでくるので、はじめは少し鬱陶しく感じる時もあったけれど、共に過ごす時間が増えるにつれて良いところが見えるようになっていった。
そしてその果てで結ばれた。
これほどまでに真っ直ぐ心通じ合うようになれたのは、彼が諦めない心の持ち主だったから。
なので彼には感謝している。
相手が彼だったから、彼が迷いなくどこまでも突き進んでくれたから、幸せな今があるのだ。
◆終わり◆




