復讐の女神を宿している女ですが、浮気した婚約者はやはりあっさり退場となりました。
私は生まれながらにして復讐の女神を宿していた。
それゆえ私を傷つけた者は皆破滅してきた。
恐らくこれからもそこはずっと変わらないのだろう――復讐の女神の力が消滅しない限りは。
そんな独特な存在として生まれた私だが、一応婚約者はいる。
婚約者の名はヴィヴェオ。
彼は私より二つ年上で。
時折お兄さん感を醸し出してくるところは少々面倒臭いけれど、基本的には善良な男性で、根っからの悪人ではない。
――と、思っていた、のに。
「僕ともっとどこまでも行こうよぉ~」
「もう、ヴィヴェオったら、甘えん坊さんね」
その日私は見てしまった。
彼が女性に抱きつき迫っているところを。
「え」
その様はあまりにも不自然なものだった。
「あっ……」
固まったのは私だけではなかった。
恥ずかしい姿を見られたヴィヴェオもまた顔面を硬直させている。
「ヴィヴェオさん、一体何を」
「あ、や、ちょ……ちょ、っと、待って! ちが! ちがが、ちがっ、違うっ。誤解だよ! これは! 誤解なんだ!」
大慌てするヴィヴェオを目にすると自然と呆れ笑いがこぼれてしまった。
「そちらの方とはすごく仲良さそうですね」
「い、いや! 違う! 違うんだ! そうじゃなくって……その、これは、違って……勘違いでっ……」
「もしかして浮気相手の方ですか」
「違う! 断じて! ち! が! う! 違うんだそうじゃない誤解だそれは完全に違う違う間違っているそうじゃないそうじゃないんだよ! 分からないのか!? 勘違いなんだよ! 完全に! 勘違いなんだって!」
――次の瞬間。
「う、うわあああああああ!!」
天井が突然壊れ、破片がヴィヴェオに降り注ぐ。
「ぅ……」
目の前に誕生したのは破片の山。
かつて天井だったもの。
そしてヴィヴェオはその下敷きとなった。
「な、なんなのよこれ……」
「貴女はヴィヴェオさんとは恋仲ですか?」
「……ち、違うわ。知り合いよ、ただの。たまたま……さっき会っただけ」
「なのにあんな風にいちゃついていたのですね」
「うるさいわよ! 放っておいて! あたしの人間関係なんてあなたには関係ないでしょ?」
女性が少々攻撃的な言い方をしてきたので。
「いいえ、関係ならありますよ」
私は片側の口角を持ち上げる。
「ヴィヴェオさんの婚約者、ですから」
◆
ヴィヴェオはあのまま亡くなった。
降ってきた破片の下敷きとなった彼は短時間で落命してしまっていたようだ。
一方ヴィヴェオの浮気相手の女性はというと、強気に出てきて慰謝料の支払いを拒否したが、代わりに女性の両親が慰謝料を払ってくれた。
そんな彼女も長くは生きられず。
慰謝料支払いが終わってから一週間も経たないタイミングで馬車に乗っていて事故に遭いこの世を去ってしまったそうだ。
◆
あれから数年、私は今、優しい夫と楽しい日々を堪能している。
今はもう辛いことは何もない。
歩む道には希望しかない。
好きなことをして生きられる毎日は最高と言っても過言ではないくらい尊いものだ。
◆終わり◆




