大切にしているものを勝手に捨てるのはやめてください! それは許されることではありません。
私は昔から手紙を書くことが好きだったのだけれど。
「ねえ、切手の箱知らない?」
「ああ。あの箱か。邪魔だったから捨てといた」
婚約者ダヴィンに大事な切手入れを勝手に廃棄されてしまい。
「……本気で言っているの?」
「ああもちろん」
「どうして……どうして、そんなこと……!」
「視界に入って鬱陶しかったから」
「邪魔だったのなら別の場所に移動させれば良かっただけじゃない!」
するとダヴィンは呆れたように長めの溜め息をこぼし、それから「そんなこと言うならもういいわ」と吐き出してくる。
「お前との婚約、破棄な」
彼は平然とそこまで言いきった。
「あんなゴミ要らねぇだろ。捨てたってべつにいーじゃん」
「そういう問題じゃないのよ……」
「ま、なんにせよ、俺らここまでだから。じゃあな。バイバイ」
こうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
◆
あの事件から一週間。
地域のゴミ捨て場を管理しているおばあさんが訪ねてきた。
「これ、お嬢ちゃんのじゃないのかい?」
「え……あ、こ、これ! 切手入れ! そうです、これ、私のものです」
「捨てていいのかい?」
「いいえ!」
「何があったか知らないけどねぇ……うっかり捨ててしまったんなら今後は気をつけるんだよ」
奇跡だ、と思った。
私の宝物。
もう二度と会えないはずだったのに。
こうしてまた巡り会えた。
「……婚約者だった人に勝手に捨てられたんです」
「ええ? そりゃあ酷い」
「本当に……本当に、っ、ありがとうございました!! もう駄目だと諦めていたので! すごく、すごく、嬉しいです! 助かりました!!」
ダヴィンに捨てられてしまった切手の箱は取り戻すことができた。
幸い傷や汚れもなくて。
中に入っているものたちも問題なく使える状態だった。
◆
あれから一年が経った。
あの事件の後少しして文通を始めた相手と結ばれた。
ちなみにダヴィンはというと、ある嵐の夜に好奇心から外の様子を見に行ったところ近くの崖から落ちてきた岩に当たられ落命したそうだ。
◆終わり◆




