柔らかな表情で婚約破棄を告げられ、私と彼の共に行く道は終わってしまいました……が、結果的にはそれで良かったなと思います。
「今までありがとう。でも、君とはここまでにするって決めたんだ。だから……さよなら。君との婚約は破棄とするよ」
三つ年上の婚約者ガイルーンズはある日突然そんな風に告げてきた。
「え……ほ、本気で、仰っているのですか?」
「うんそうだよ」
「そう、ですか……」
「ごめんね。これまで付き合ってもらったことに感謝はしてるよ。でも僕、君とはもう無理なんだ」
彼は柔らかな笑みを唇に浮かべつつ鋭い刃のような言葉を発して。
「じゃあ、ばいばい」
最後それだけ言って去っていった。
いきなりの婚約破棄に戸惑う私は何も考えられなかった。
こういう時どうすればいいのか。
こういう時どんな顔でいればいいのか。
何も分からないまま時だけが過ぎていった。
――だがそれからちょうど一年ほどが経った頃に思わぬ出会いがあって。
意外な形で出会った彼とはすぐに意気投合。そのまま気づけば結婚話が出てきていて。その時は何の躊躇いも生まれなかったため、私は、彼と共に生きていく道へ進むことを選んだ。そして、彼もまた、同じように私と共に行く道を選んでくれた。出会って間もない時から気が合った私たちは雨の日の川の流れのように結婚へと向かったのだった。
一方ガイルーンズはというと、私との婚約を破棄した日から二週間ほどで命を落としたそうだ。
というのも、隣の家の娘さんにやたらと絡むようになったそうで。
それに激怒した娘さんの父親がガイルーンズのもとへ殴り込みに来て、揉み合いになり、その最中ガイルーンズは足を滑らせ転倒。そのままこの世を去ることとなったようである。
彼の最期は呆気ないものだった。
私を切り捨ててでも掴みたかったもの。きっとあったのだろう。私は聞いていないけれど、誰かが聞いていたかも不明だけれど、少なくとも彼の中にはあったはずだ。
けれどもそれは形なきもののまま終わった。
何も掴めないまま、彼の生涯は幕を閉じた。
◆終わり◆




