暑すぎて声を発していたところその姿を婚約者に見られてしまい……?
「あ、あっつぅぅぅぅぅぅーっ!!」
その日私は家の前でそんな風に叫んだ。
するとそれを婚約者である彼リディオに見られていて。
「なんてことを言うんだ、お前は」
「すみません」
「幻滅した! お前との婚約は破棄とする! もう縁切りだ!」
関係を叩き壊されてしまった。
「待ってください、それはさすがに急すぎませんか」
「うるさい黙れ」
「酷い……」
「前から鬱陶しかったんだよ! お前は! ……はー、ダル。もういい。俺ら、ここまでだ。お前はさっさと消え去れ!」
不機嫌なリディオはそっぽを向いて私がいない方向へと歩き出してしまったのだが――直後、屋根の上の大工さんが落とした銀色の桶が彼の頭頂部に激突――その衝撃で彼は意識を失った。
「おおう! すまねえ! うっかりやっちまったぜぇ」
大工さんは軽く謝ってどこかへ去っていった。
「リディオさん? あの、もしもし、リディオさん……し、死んで……ない、ですよね。大丈夫ですよね……?」
取り敢えず救急隊に通報しておいた。
その後搬送先の病院でリディオの死亡が確認された。
◆
あれから数年、私は、孤児院で働いている。
「お姉たま! 遊ぼ遊ぼ! 一緒に遊びたいっ」
「おい! お姉たまと遊ぶのはぼくなんだってば! 抜け駆けなし!」
「あたしと遊んでぇ、ううふふふぅ、遊んでちょうだぁい、遊んでほしいのぉ、うふふふぅん、うっふふふぅぅぅん、お姉さまぁ遊んでよぉ」
この道を選んだのは私だ。
だから後悔は欠片ほどもない。
賑やかな子どもたちと過ごせる時間、それは私にとって何よりもの宝物。
「ぼーくーさー、しーりーとーりーしーたーいーよー」
「お前後な!」
「なーんーでーなーんーでー?」
「喋んの遅い!」
「えーえー……」
「先俺からなっ」
「あーあーそーっかー……なーらーまーつー」
私はこれからもここで働いていくつもりだ。
なぜならそれが最も幸せな生き方だから。
形式に縛られるだけではない自分なりの人生を見つけ歩める可能性があるのなら、私はそれを選びたい。
◆終わり◆




