ある夏の日のこと、いきなり婚約破棄されました。~小さな幸せを感じられる自分でいたいですね~
それはある夏の日のこと。
「お前との婚約だけどさ、破棄するわ」
婚約者である彼レッツェオがそんな風に宣言してきた。
「婚約破棄……何か理由が?」
「お前といても楽しくないから。それが理由だ」
レッツェオはさらりとそんなことを言う。
「本気で仰っているのですか?」
「ああ、本気だ」
「そうですか。では仕方ないですね、分かりました」
「話が早くて助かる」
何を言っても無駄なのだろう。
そう察せたから。
諦めてすべてを受け入れることにした。
「ではな、さらばだ」
振り返れば楽しく過ごしていた頃もあった。
隣り合って同じ方向を見つめて。
未来を信じていた頃も確かにあったしあれがすべて幻だったわけでもない。
でも、終わってしまった――ただそれだけのこと。
◆
あれから数年。
私はもう過去には囚われていない。
愛する人と結ばれ。
穏やかな家庭を築き。
何よりも愛しい人と共に在る。
お茶を飲んだり、美味しい物を食べたり、温かな日射しを浴びたり……そういった日常の中での小さな幸せを共に楽しめる相手がいるということが何よりも嬉しい。
ちなみにレッツェオはというと、あの後少しして詐欺師の女性に惚れ込んでしまいその結果すべてを失うこととなってしまったそうだ。彼は勝手に破滅した。
◆終わり◆




