今になって婚約破棄? しかも理由がそれですか? ……申し訳ないですが、まったくもって理解できません。
「貴様のような魔女とは夫婦になれん! よって、婚約は破棄とする!」
我が婚約者であった王子リカルドは、生まれつき魔力を持っていた私のことを悪意を持って『魔女』と呼び、一旦婚約しておきながらある日突然婚約破棄宣言してきた。
「婚約破棄……今になって、ですか?」
「ああ」
「なぜ今になってそのようなことを」
「わたしがそうしようと思ったからだ!」
リカルドにとっては自分の心以外どうでもいいもののようだった。
「わたしの決定がすべて。わたしの決定が秩序。わたしの決定が正義。よって、他の要素というのはすべてどうでもいいものだ」
だから彼は他者のことを考えない。
ただひたすらに自分のことだけしか考えず生きている。
「ですが、式の準備ももう進んでいるのですよ? 今さら婚約破棄なんてことになったら色々な方に迷惑を――」
「うるさい!! 黙れ!!」
「え……」
「いいか? わたしの決定がすべて。わたしの決定が秩序。わたしの決定が正義。それがこの世界の理だ」
彼は自信満々にそんなことを言うけれど、私にはまったくもって理解できなかった。
「申し訳ありませんが……理解できません」
なのではっきりそう言っておいた。
彼の思考は理解不能だ。
王子とはいえさすがに自分勝手過ぎる。
「愚かな魔女に分かってもらえずとも結構。……ではな。貴様とはさよならだ。ま、せいぜい、結婚相手が魔女でも気にしないような貧民とでも結ばれるがいい。……そんな心の広い男は世にはなかなかいないかもしれないが、な」
私たちの関係は終わりを迎えた。
……きっともう、二度と、私の人生と彼の人生が重なることはないだろう。
◆
あの後、隣国へ移り住んだ私は、そこで人々を癒すために魔法を使った。
その結果良い評判が広がって。
いつの間にか私は偉大なる癒し手として有名になっていた。
そんな風にして生きていたところ、その国の第一王子に見初められ、彼と結婚。
隣国の王子の妻となる未来なんて欠片ほども想像していなかった。そんな展開は娯楽的妄想だとしても考えてみたことさえなかった。けれど、皆に祝福されながらのことだったので、この道を選んだことへの後悔は微塵もない。
むしろ皆への感謝ばかりだ。
今は幸福と感謝だけがこの胸の内を満たしている。
ちなみにリカルドはというと、あの後少しして王である父が亡くなったために王の位に就いたそうだ。
しかし、王になるや否や民からお金を搾り取ろうとしたために、民から嫌われてしまったそうで。
その結果暴動が起こり。
もうすべてがどうしようもない状態になってしまい。
そしてやがて、激怒している民らの手で、殺められてしまったそうだ。
彼は悪王だった。
……最期まで愚かだった。
◆終わり◆




