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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 6 (2026.1~)   作者: 四季


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喋り方がどうだとか文句を言う気はありませんが、悪しき行いをした人には天罰が下るべきだと思います。

「お前との婚約は破棄とすることにしたァ!」


 私の婚約者である彼デサイドウィットは喋り方にクセのある青年だ。


 だがそれだけならべつに気にはしなかった。

 そんなことは些細なことだから。


「え」

「聞こえてないのかァ? ならもっと大きな声で言ってやるゥ! お前との婚約は今日をもって破棄だァ!! 破棄だ破棄だ破棄だァッ!!」

「あの……そうではなくて、ですね」

「はァ? なら何なんだよもゥ! めんどくさいなァ、ややこしいなァ、はっきり言えよォ!!」


 だが、いきなり婚約破棄してくるというのは、さすがに黙って流してはあげられないこと。


 人生を左右する重要なことだから。

 軽いノリで言って済むことではない。


「婚約破棄する正当な理由があるのですか?」

「……あァ?」

「私たち、特に揉めていないですよね」


 すると彼は。


「そういうとこだよそういうとこォ! お前はなァ! いちいち面倒臭いんだァ! 女の子なら可愛くしてろよ、もっと、大人しく忠実にさァ。言いなりになってりゃいいんだよォ! 男の、さァ!」


 滅茶苦茶なことを言い出した。


 まったく説明になっていない。


「それはただの悪口ですよね」

「事実だろォ!」

「そうでしょうか……ではそれが婚約破棄の理由ということですね?」

「ああそうだよォ!」

「ですが、それは、正当な理由にはなりませんよ」

「黙れ黙れ黙れェ! いっちいち、いちいちいちいち、いっちいちいち、ごちゃごちゃ言うなよォ! 女なんだからよォ!」


 独特の個性があっても善人であるならそれで何の問題もなかった。


 だが彼は想像以上に心ない人だった。

 婚約者の悪口を平気で言えるような心ない人だった。


 非常に残念に思う。


「いいから黙って去れよォ!!」


 デサイドウィットは突き飛ばしてきた。


「っ……」


 よけきれず、押され、腰から地面に落ちる。


「はっはっははァ! ざまァ! ざまぁざまぁざまァ! いい年して転んでだっせェ! ざまぁざまぁざまざまざまァ!」


 転んだ私を見てデサイドウィットは大喜びしていたのだが――次の瞬間、彼の後頭部付近に一匹の桃色に輝く妖精が現れて。


『女の子を虐めるなんて酷いやつだね! 許さないよ!』


 妖精は光り輝く粉をまとった紐を二本作り出すと、それらを使いデサイドウィットの喉もとを縛り上げる。


「ぐぎゃァ」

『これはねぇ、天罰だよ! 女の子虐め、弱い者虐め、そういうのってサイテーな行いだから。泣いても許さないよ!』

「ぁ……ぅ、ぃ、や……やめェ……ぐ、ぐるじび……ぐるじぶィ……」

『苦しい? 一度体感すればいいんだよ。女の子を苦しめておいて自分が苦しむのは嫌だ、なんて、そんな勝手なこと言わないよね? 言わないよね!」


 そのまま縛り上げられたデサイドウィットはやがて意識を失った。


 地面に崩れ落ちる。

 完全に脱力している様子だ。


「あ、あの……妖精さんは、一体、どなたで?」

『えへへ。名乗るほどの者じゃないよ。しがない妖精だから。悪人に天罰を下すのが役割ってわけ! じゃあね、女の子、元気でね!』


 妖精は光ながら姿を消した。

 もうどこにもその姿はない。

 幻を見ていたかのような気分だけが残る。


 この一件によってデサイドウィットは落命し、結局、私は彼と離れることとなったのだった。


 だがそれで良かったのだと今はそう思える。あんな心ない人と生涯を共にするなんて危険だから。彼という現実に結婚前に気づけたことは大きなことだった。実際に結婚してしまうと離婚するというのはなかなか難しいので、今のうちに離れられて良かった。



 ◆



 デサイドウィットに婚約破棄を告げられた後、少し暇になったこともあって勉学に打ち込むようになった私は、女性初の学者になることができた。


 私のようないたって普通の女にこんな未来が待っているなんて思わなかった。

 けれどもそれは現実で。

 そう考えると、ここに来るまでに起こったすべてのことは必要なことだったのかもしれない。


 婚約とか、結婚とか、そういう話は今はどうでもいい。


 私は私が行くべき道を見つけた。だからそれに従って生きる。それこそが定めであり運命なのだと理解しているから。小さなことは気にしない。目の前にある道を迷いなく進む、ただそれだけ。


 過去の悲しい出来事は過去に捨てていこう。


 それでいい。


 どんな出来事も所詮はその時の出来事なのだから。


 過去は過去、現在は現在。

 そこを書き換えることなど誰にもできはしない。


 ならば過ぎ去ったものにいつまでも縛られている必要もないはずだ。



◆終わり◆

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